成長/三年生くらい



「彦四郎、お茶淹れたよ」

「ありがとう、」



目の前には今僕が淹れたお茶と彦四郎の持ってきた団子があり、二人で向かい合うように座っている。茶を一口呑むとふにゃりと頬を緩めた。その安心しきった顔で今日も昨日の演習がどうだったとか、後輩に頼られたとか食堂の新メニューのアレが美味しかったとか他愛ない話をしながら休日の午後のひと時を過ごしたりする。楽しそうに笑ったり、また伝七に頼りにならない学級委員だと言われ落ち込んだりそんな話に相槌をうちながら僕も笑ったり、慰めたりする。

同じ学級委員という立場で委員会が一緒。たまに合同授業の時に組んだりとかするけれどは組のみんなと過ごす時間より圧倒的に少ないのになぜか彦四郎といると安心する。


心地よいという言葉がしっくりくる。面倒見がよくて、気がきいて、先輩から受け継いだような大食いっぷりには驚かされるところがあるけど美味しそうに団子や饅頭を食べている姿を見ると何も言えなくなる。胸の内がぼんやりあったかくなって、嫌なことも疲れた体も忘れ思わず見いってしまう。

「それで、今度は左吉に頼りない学級委員長だなって言われたんだ」

「ははっ、もう口癖みたいなものだね」


い組の連中は口ではそう言うけれど、なんだかんだ頼りにしていることは知っている。本人も昔のようにひどく落ち込んだりすることはないようだけどやっぱりちょっとは気になるみたいだ。


「卒業までには絶対頼りになる学級委員長と言われるようになる!」

「それはどうかなあ?」

「えっ!」

「彦四郎は今のままで充分だよ」

「そ、うなの?」

「うん」

「うーん…なんだかなあ」


今のままでいいんだよ彦四郎は。頑張らなくたってこの今の状態の方がい組の学級委員長として務まると思うよ、と言うと少し困ったように笑った。


「庄左ヱ門はかっこいいよな」

「えっ?」

「いつも冷静で僕の相談とかも毎回聞いてくれるし」

「……」

「惚れそう、なーんて」

「…!」




あぁ、そういうことか。
冷静沈着?は組の頭脳?
そんな風に周りから言われているけれど実際は違うんだ。誰かさんが楽しそうに笑ってると僕も嬉しいしあったかい。落ち込んでいると悲しいし、なんとかしてあげたくなる。距離が近いと心臓が高鳴ったり顔が熱くなったり冷静でいられなくなるのはやっぱり、


「はあ、困った」

「え?悩みなら聞くよ!」

「うーん、彦四郎に言ってもなあ」

「なっ!僕だってたまには庄左ヱ門の力になりたいんだ!」


そう言われてもな、まさか彦四郎が好きみたいなんだけどどうすればいい?なんて本人に聞けないし。







うーん、どうしようか?



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