成長
「なんでお前がココにいるんだ」
「そんな固いこと言うなって!」
意味が分からない。
は組の加藤団蔵がい組である僕の部屋にいること自体おかしい。同じ委員会である左吉の部屋に用があるのなら分かるけど生憎僕と同室ではない。
「何度も言うけど、左吉の部屋は隣りだから!」
「んー…あ!いなかったからココで待ってたんだ!」
「なんでここで待つんだよ!左吉の部屋で待ってればいいだろ?」
「うっ、細かいことは気にすんな!ほら、食堂のおばちゃんに貰った饅頭一緒に食おうぜ!」
「話をそらすな!」
はっきりいって団蔵は…苦手だ。
自分で言うのもあれだけど、僕は温厚だと思う。声を荒げて感情を露にすることは無いし事は穏便に済ませたいと思っている。でもこの加藤団蔵は僕とは正反対といえるタイプで声は大きいしうるさいし派手だし鍛練バカ。別にそれが悪いという訳じゃないけど、苦手なもんは苦手だ。
同じ学年だし、何度も合同授業を受けて同じペアになったことはあるが、最近必要以上に…ついてくるというかなんというか。
それに餌付けされているような気がする。
「やっぱ食堂のおばちゃんの作った饅頭は美味いな!」
「………うん」
一体何が目的なのは分からない。
「あのさ!宿題で分かんないとこあるんだけど彦四郎教えて!」
「なんで僕?庄左ヱ門に聞けばいいだろ?」
は組の学級委員長なんだから、と言うと困ったような笑みを浮かべた。1年の時から思ってたけど団蔵は動物に例えると犬だと思う。
「彦四郎に教えて貰いたいから、じゃ理由になんない?」
「……どこ」
「よっしゃ!」
…なんなんだその無駄な笑顔は。あんな風に言われたら断るのもおかしい気がして静かにため息をついた。
団蔵が懐からぐしゃぐしゃになった紙を取り出すと二人で並んで机にむかった。
「にんたまの友は?」
「あ……忘れた!」
「はあ…ちょっと待ってて」
本当に教えて貰う気があるのだろうか。仕方なく自分のを使おうと取り出すとフッと腰に違和感を感じた。と、同時に鳥肌が立った。
「〜っ!!なっにすんだよ!」
「ははっ!いい反応!」
コイツ……っ!!
からかわれてるとしか思えない。最近の団蔵の行動には理解出来ないことばかりだ。
左吉に用があるはずなのにどこから調べたのか僕の好物をもってきては部屋に居座ったり、合同演習の時は必ずといっていいほどペアになる。あげくの果てには尻まで触られ完全に弄ばれる始末。
もう嫌だ。
苦手なんかじゃない。
僕は団蔵がキライだ!
相変わらず汚い字とかその笑った顔とか、学年一の馬術とか全部、ぜんぶキライだ!!
「彦四郎」
悔しくて目の前が滲むのを必死でおさえ顔をあげると唇にやわらかい感触がした。
お前のことなんて大嫌いだ!
それなのになんで、こんなに心臓がうるさいんだ。
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マイナーCP企画
【やっと、結ばれた】様へ提出
素敵な企画に参加させていただきありがとうございました!