もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ








・・・・・・?
あれ、私今狼だよね?聞こえるはずないよね?


「誰だといっている・・・出て来い!」


私はお母さんに目を向けた
お母さんもいまいちよくわかっていないようで、けれどこのまま隠れていても攻撃されるだけだろうと、隠れている場所から出て行った


「狼・・・?」
【ねえ、声が聞こえるの?】


その人は私の声に、周りを見たが、誰も居ないため、もう一度私たちを見た


「お前がしゃべっているのか?」
【うん、私子狼なの】


その人は少し信じられないように、けれど声が聞こえるのは本当なので、信じざるを得ないっていう感じかな
そうなのか、と呟いて、私の頭をなでた
意外となで方が優しくて、顔は怖いのになーと思った


「お前らは学園の狼なのか?」
【いいえ、違うわ】


お母さんが答えても、その人は聞こえていないかのようで
私はその人に聞いた


【お母さんの声は聞こえないの?】
「何か言ったのか?」
【うん、私たちは学園の狼じゃないよって】
「そうなのか」


その人は聞こえなかったな、お前だけみたいだ、と言った
・・・なんかずっとその人って言ってるのもなんだかなぁ・・・


【ねえ、名前教えてっ】
「俺は・・・潮江文次郎だ」
【文次郎ってよんでもいい?】
「あぁ、構わんが・・・お前に名前はあるのか?」


その人改め文次郎の問いかけに、私はきょとりとした
名前・・・・名前って、なかったよね


【私にもあなたにもないわね・・・】
【私もお母さんも名前はないよ、野良だもん】
「・・・そうか・・・じゃあ、お前の名前は壬琴でどうだ」
【壬琴・・・私の名前?】


文次郎はあぁと頷いた
お母さんも良かったわねと笑った
私は嬉しくて、文次郎に飛びついた



私の名前は壬琴!










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