もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









××の月命日の次の日
私はそろそろ卒業を迎えるその場所に向かった

入れば、一瞬でしんと静まり返る教室
いやでも目に入る、一輪挿しの菊の花

私はうつむいて、自分の席に座った
でも、なんだかやっぱり落ち着かなくて、荷物を置いたまま私は屋上へ向かった





がちゃり、と音を立てて、重い扉を開く
私は広がる広い空を見上げた


「・・・・・・私は・・・・」


いつから、こんなに弱くなった?
××は、壬琴として、時代を超えたむこうで、幸せに暮らしているはずなのに、私はこんな浮かない顔
壬琴に、顔向けができないじゃない
そう思えば、浮かんでくる、向こうの人たちの顔
愛しいと、そう思った彼を思い出す


私は涙がこみ上げてきて
けれどそれを飲み込むがために、広い空を見上げた
青く広がる空は、私の悲しみなど知らないかのように晴れ渡る
気分が沈んでいるというのに、なんとも腹立たしい
そう思えば、前に似たようなことを壬琴に言って、横暴だよ、怜奈ちゃん、と笑われたんだっけ
なつかしい、な・・・


「・・・・・・壬琴・・・・・」


私も、そっちに逝ったら、また会える?
私はそう呟いて、フェンスに近づいた




依存の親愛









- 58 -