もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









「・・・・・・んっ」


もぞり、と布団が動く
目をそろりと開ければ、木目じゃない、見慣れた自分の部屋の天井


「帰って、来ちゃった・・・」


ぽつりと呟いた
そしてこみ上げてくる涙
ポロポロと枕を濡らした







世界は、誰が死んでも普通に流れていく
今日は、あの交通事故からちょうど1ヶ月
未だに私は学校に行けないで居る
けれど、そんな自分が情けなく思えてきて、××の月命日となる今日、私はお墓参りに来ていた

花を持って歩く道
ここを歩いたのは丁度1ヶ月前なのに、なんだかもっと前な気がしてならない
そして、一つの墓標の前で立ち止まる


「・・・あ、れ・・・?」


花が、まだ新しかった
線香は既に燃え尽きた後だったけれど
××の両親は、今日の午後に来ると聞いているから、おじさんとおばさんじゃない


「学校の誰か・・・?」


それにしては、花が仏花らしくないのだ
××の好きな花を集めた、その花

まるで、彼女を知り尽くしたかのような・・・――――

そこまで思ってから、私ははっとしたように墓標をみた

ここで考えるんじゃなくて、家で考えればいいじゃない
今は、××に手をあわせよう

私はそう思って、持ってきた花を入れた





手をあわせて想う









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