もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









「なー、壬琴」
「なーにー?左門」


文次郎に大丈夫だっていって貰ってから、私は今まで悩んで落ち込んでいたのが嘘のように回復した
そしていつも通りの会計の手伝いにきていたとき、左門が帳簿を一つ終えたのか、私に声をかけてきた
文次郎はあんまり良い顔をしなかったみたい・・・気配がちょっとむっとしたから
左門は気にせず笑顔で爆弾発言を落とした


「壬琴は潮江先輩とつきあってるのかっ?」
「なっ」
「・・・えっ?」


悪気のない笑顔を引っ込めて、左門は違うのか?と首を傾げた
私は笑ってないよーとかるーく流した
文次郎は一拍おいて、焦ったような気配を見せた


「ば、バカタレっ!そんなわけがあるかっ」


学園一忍者してると言われている文次郎だし、そんな噂が立ってるなんて迷惑なんだろうなと私は思いながら、検算途中の帳簿に再度視線を落とした



―――――
side:三木ヱ門



学園内で今少し噂になっていることがあった
それは、我が会計委員会の委員長にして学園一忍者してる潮江先輩と、狼でありながらある日突然人間になってしまい、事務員として働く、会計委員会手伝いの壬琴さんが恋人同士であると言う噂だ
どこまでの人数が知っているのかは僕には分からないが、左門が目を輝かせてそれを本人達に聞いたのは、僕がその噂を知ってからしばらくたった頃だった


左門の質問に、壬琴さんはきょとりとしたものの、すぐに笑って否定した
しかし、潮江先輩は顔を真っ赤にして、バカタレと叫んでいた
その様子に、潮江先輩は壬琴さんが好きなんだという事を悟った
三禁がとか言っていても、結局人なんだな、潮江先輩も・・・

僕は心中で潮江先輩、がんばってくださいと応援したのだった



学園の噂








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