もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ








文次郎とハチ、それにお母さんと蒼兄に助けられて、私は学園に戻った
帰ったら怜奈ちゃんに抱きつかれて、わんわん泣かれた
・・・またあえなくなったらどうしようかと思ったって
私、これ以上ないくらい愛され者だね
私は怜奈ちゃんを抱きしめていつかのようにごめんね、ごめんね、と呟いた




「居候の身にも関わらず、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「気にするでないわい、二人とも無事で何よりじゃ」


私は学園長に頭を下げた
本当に、今回は無事だったから良かったものの、私の髪と瞳の色は珍しいから、きっと今後も迷惑をかけてしまいそう
学園にいるだけなら良い、でも学園外に行く用事があったら?今回のように街に行くことになったら?
私はたくさんの人に迷惑をかけることになる、それを実感した

学園長の庵を後にして、私はぎりりと手を握った
食い込んだ爪が痛い
それでも、人間の爪はとがっていなくて武器じゃないから、血が出るって程じゃなかった
ぎゅうぎゅうと握った手はきっと白くなっていることだろう


「・・・壬琴ちゃん・・・?」


心配そうに私を覗き込む怜奈ちゃんに、私はにこりと笑顔を返した
上手く笑えていたのかは、知らないけれど


―――――
side:怜奈



あの日から、壬琴の元気がなくなった
空元気で無理しているような気がする
あの時がそんなに怖かったのかな・・・?
幼馴染としては心配なことこの上ない


「って感じなんだけど、仙蔵くん、潮江くんけしかけられない?」
「あいつが気がつかないと壬琴に話しかけないだろうからな・・・分かった、協力しよう」


私はあの日以降、潮江くんと壬琴をくっつけるため、潮江くんに近い立花くん・・・まぁ、今は仙蔵くんって呼んでるけど、仙蔵くんに話を持ちかけた
彼も気がついていて、面白いからと協力してくれることになったのだ
持つべきは協力者だね
お陰で潮江くんにはっぱをかけるのは凄くやりやすい
私は仙蔵くんと別れると、気分よくおばちゃんの手伝いをするために歩き出した

・・・これで、壬琴も元気になってくれるよね・・・?



密かに協力する人は








- 45 -