「成立だ、こいつは貰っていく」 「えぇ、お好きになさってください」 先ほどの音からあまり時間がたたないうちに、男達の会話は終ってしまった できればもう少し、長く話をして欲しかったのだけれど・・・ 音に反応した野良狼が、遠吠えで他に知らせてくれたから・・・ 私は近づいてきた男達を見て、怜奈ちゃんに小さく、行くよ、と告げた 後ろで頷く気配がして、私は怜奈ちゃんの手を引いて立つと、そのまま流れるように、私たちを連れてきた男の背後に回りこみ、手刀を入れる そのまま頭の悪そうな男の鳩尾に蹴りを叩き込みつつもう一人の男にぶつけるように勢いをつけた それでも、私の力なんてたかが知れてるから、少しだけ隙ができればいい 「きゃぁ!」 怜奈ちゃんの悲鳴が聞こえた、外の男達に捕まったのだろうか けれど私はそれを気にすることなく、別の男を昏倒させるべく走る 「私に汚い手で触るんじゃないわ、よ!」 その言葉と共に後ろで男のうめく声がした うん・・・懐かしいなぁ・・・昔変質者に腕つかまれて男の急所を思いっきり蹴ってたんだっけ、怜奈ちゃん・・・普段は絶対やらないんだけどさ きっとこういうときなら一回はできると思ってたよ、怜奈ちゃんなら・・・ そのまま怜奈ちゃんの気配が遠ざかるのを感じつつ、私は首に衝撃を受けて、意識を飛ばした ――――― side:怜奈 向こう側から走る足音に気づいて、私はそちらへ向かった 「っこんなときに、狼・・・っ!?」 壬琴の友達 確か、壬琴と一緒にいたはず 今言葉が伝わらないことがもどかしい・・・私は聞くことができないのだから 私はできるだけ怖がらせないように近づいて、彼女の着物の袖を軽く引っ張った 「え・・・襲ってこない?もしかして・・・学園の・・・?それに、壬琴と一緒の色・・・」 私はその言葉にひとつほえて答えて、蒼くんに知らせるために遠吠えした すぐに返ってきた遠吠えに、それほど3人が遠くないことを知る しばらくすれば、その姿が見えた 「白銀!・・・と、黒須さん・・・!」 「壬琴は一緒じゃないのか・・・っ!?」 「壬琴が・・・私だけならまだ逃がせるからって・・・!」 学園の人間にあって、安心したのか泣きがしてしまった彼女・・・黒須さん 壬琴はこの子が一般人だからってきっと逃がしたんでしょうね・・・けれど、私が心配なのは壬琴なのに・・・ 3人の会話を聞きながら、私は蒼くんに話しかけられた 【壬琴は平気かな・・・】 【大丈夫であることを祈るしかないわ・・・でも、私の子だもの、きっと大丈夫だと信じてる】 【そうだね、白銀さんの娘だもんね・・・】 なんだかんだ言って、学園の狼たちは皆壬琴のことを心配してくれているのだ だから、無事で居てね、壬琴・・・ 無事を祈って → 戻 |