side:文次郎 「黒須さんと壬琴がさらわれたじゃと?」 「はい、1年は組の乱太郎、きり丸、しんべヱが見たと」 ふうむ、と学園長は少し唸り、分かった、と頷いた 「文次郎、おぬしに任せよう。必要なら誰かに声をかけなさい」 「ありがとうございます」 俺は頭を下げ、庵を退室すると、急ぎ竹谷の元へ向かった 「壬琴が?」 「あぁ、においをたどって欲しい、できるか」 竹谷は分かりましたと頷くと、狼の住む小屋を開けた すると、中から白銀と名付けられた壬琴の母親が飛び出してきた 続いて、青がかった黒の狼も出てきた 竹谷は2匹に壬琴を探せるかと問いかけ、2匹は吠えて答えたそのとき 何かに気がついたのか、2匹は空を仰ぎ見た そして何かに応えるように遠吠えする 「白銀?蒼?」 「どうしたんだ?」 「さぁ・・・こんなの初めてで・・・」 竹谷も目を瞬かせて、お前らどうしたんだ?と2匹に声をかけた 白銀がこちらを向いて一つほえると、そのまま走っていった 蒼もこちらをじっと見た俺と竹谷は頷くと、白銀に追いつくために、蒼の案内を頼りに走り出した ――――― side:白銀 朝からそわそわと落ち着かなかった 虫の知らせというのか、何かありそうで・・・ 私も昔・・・もう数年前になってしまうけれど、壬琴と同じ時代に生まれ育って死んだ人間だった 生まれた壬琴が同じだと言われたときに、どんな運命なのかと嘆いた 私と同じ運命は辿らせまいと忍術学園に身を寄せたはよかった 私は既に狼として、人を殺さなければならないことに諦めがついていたけれど、壬琴にはそれがまだない状態で人を殺させてしまったわ ・・・けれどそれがあったからこそ、あの子は人になることができたのかもしれない 今は牙も爪もない壬琴 それでも狼としての力を失うことなく、いることができたのは、まさに神様のいたずらとしか言いようがない それがあるからこそ、壬琴はどうにかして犬笛を吹いて知らせることができたのだろうし 遠くからSOSを知らせる野良の遠吠えが聞こえてきた 壬琴が助けを求めている、SOSの声 その遠吠えに応えると、私はハチくんにひとつほえて、駆け出した きっと二人は蒼くんが連れてきてくれる 今はただ、壬琴がいるその場所へ、私は駆ければいい 太陽に照らされて、白い毛並みが輝いていた 助けに行こう、その場所へ → 戻 |