文次郎に約束したとおり、私はお手伝いを終わらせてから、私は会計室にお邪魔しにいった きっと集中しているだろうから、とそぅっと障子を開けて顔を覗かせる 「あ!壬琴!」 左門から上げられた声にびくぅっと肩を揺らした ・・・こ、こんなに早く反応があるなんて思わなかったんだよー・・・ 私はにへらと笑って、こんにちは、と挨拶した 「思っていたよりも早かったんだな」 「手伝いに行くっていったら吉野先生が早く上がっても言いよって言ってくれたんだよ!」 顔を上げた文次郎にそう返せば、文次郎はそうか、と言って算盤と帳簿をくれた って、この算盤・・・・重い・・・・っ! 私に渡された算盤を見て三木ヱ門が声を上げた 「潮江先輩、それって10kg算盤じゃ・・・」 「こ、これって10kgもあるんだ・・・・道理で重いと・・・」 「これくらいもてて普通だろう、壬琴もなれるようにして損は無いぞ」 私は少し考えた ・・・まあ、力仕事ができるようになって損はないと思うから・・・まあいっか 私はあいていた文次郎の隣に座ると、帳簿の文字をざっと眺める 「文次郎、これって金額どこから書き写してるの?」 「各委員会からの使用報告で計上された金額からだな」 「そっかー・・・じゃあ、ちょっとそれ見せて貰ってもいい?」 文次郎はいいぞと言って報告書を持って来てくれた 私はざっと目を通して、間違っていたところを確認する 帳簿に訂正を書き込むと、新しい帳簿に金額を写し、ぱたんと音を小さく立てて閉じた 「1冊終わりっ」 「えぇっ!壬琴、早いよ!」 「算盤は得意なんだよ、習ってたから」 驚く団蔵に、私は苦笑いして返した 隣の家がそろばん塾で、せっかくだからと小さい頃から通ってたおかげで、算盤式暗算っていうのが得意になった ついでにーって書道も習ってたから、そっちはそっちで得意なのだ だからこその事務仕事なら任せて!なんだけど 「壬琴は仕事が速いな・・・何冊か頼めるか?」 「うんっ!」 私は文次郎から帳簿を預かると、最初と同じように計算して、訂正して書き写して、と繰り返した 久しぶりのこの雰囲気に、なんだかほわりと心が温かくなった気がした 会計室で → 戻 |