もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ








「お、壬琴、暇なのか?」
「ハチ?授業は?」


休憩をもらって、みんなに会いに飼育小屋へ行くと、そこには先客が居た
・・・なんだか久しぶりにハチと話した気がする
それはハチも同じだったみたいで、なんだか久し振りだなと笑った
外で作業するからと、ハチが小屋を出ていくと、狼のみんなが寄ってきた


【壬琴、悩み事とかないかい?・・・なんだか雰囲気が落ち込んでる気がするんだ】
「蒼兄・・・」


蒼兄にはかなわないなぁ・・・
ほかのみんなもなんだか雰囲気がそわそわしてて、心配かけちゃったかなとなんだか悪いことをした気持ちになった
話そうかな、と思ったとき、外にいたハチが小屋に入ってきて、そういえば、と言った


「壬琴、最近潮江先輩のところ行かないけど、何かあったのか?」
【壬琴ちゃん、あの人のこと大好きだったわよねぇ】
【ちゃんと仲直りしねぇと後でもっと気まずくなっちまう】


ハチの言葉におばさんとおじさん・・・蒼兄の両親たちが心配そうに言った
私はうん、と小さく頷いて、座った
お母さんが心配そうに体をすり寄せてくれた


【壬琴、無理に仲直りしろとは言わないわ、けれど後悔はしないようにしなさいね】
「お母さん・・・うん、ありがと」
「お前らの会話はわかんないけど、気持ちの整理はついたのか?」


ハチが苦笑気味でそう聞いてきて、私は頷いて返した
私がまとわりついてただけだから、私が行かなければ何も始まらないんだよね、きっと

今日お手伝いが終わったら、会計の手伝いに行こうと私は心に決めた



背中を押されて1歩








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