食堂に行けば丁度終わったところだったのか、声をかけると怜奈ちゃんが笑顔で寄って来て 私は勢いよく抱きついてきた怜奈ちゃんに押されて倒れないように足に力を入れた でも衝撃は思ってたよりも軽くて、やっぱりやせちゃってるんだなと感じた 何かあったのだろうか、と言うのは愚問で、きっと私が居なくなったから 自惚れてるわけじゃなく、私と怜奈ちゃんは仲が良かったから・・・ 「ね、壬琴!私ね、おばちゃんに包丁捌きほめられたのよ!」 「ほんとっ?さすが怜奈ちゃん」 怜奈ちゃんは凄く目を輝かせて報告してくれて、私もそれに笑顔で返す 失われたはずのやり取りが、今現実にある その幸せをかみ締めた けれど、その裏側で、後ろめたいような感情があったのに、私は気づかない振りをしていた ――――― side:半助 「いい子ですねぇ、小松田くんの失敗したことを文句も言わずにきちんとこなしてくれる。情報を漏らしたような気配もありませんし、そのまま居てくださるなら私も助かりますよ」 「そうですか」 彼女達が学園で働き始めてから数日 事務担当の吉野先生はそういった 私たち教員から見ても、あの二人は特に変わった様子もなく、ごく普通の人間だった 狼のときの力がそのままなのか、壬琴の方は気配にさとい部分などがあったが、侵入者が来たのに気がつくと教えてくれる あくまでも恩返しと住む場所が欲しいだけというのが分かって、間者とは言いがたかった 「ふむぅ・・・どうやら恋愛というよりは親愛対象のようじゃし・・・」 私達の報告に学園長は考えこんだ 学園長の仰るとおり、あの二人に生徒たちが抱く感情は恋愛よりも親愛が多く、は組の生徒たちも姉のような、あるいは妹のような人たちだと話していた 「色の経験をと言う名目なしに、学園に置いていても良いのではないかと。事務も食堂も助かっていると話していますし・・・」 「私もそれは同意ですな、二人とも自分の立場をわきまえているようですし」 私と山田先生の言葉に、学園長は頷くと、怜奈さんは帰れるまで、壬琴さんは狼に戻るまでは学園で働かさせるという事に落ち着いた 監視の目を外した次の日には、壬琴さんが私の元を訪ねてきた 「あの、土井先生、今かまいませんか?」 「どうかしましたか?」 「その・・・監視、外されましたよね?どうしてですか?」 気配に敏い壬琴さんらしく、気がついていたようだ 不安げに、けれどどこか気まずそうにそう聞いてきた 私は簡単に二人に害はないと判断されたので監視する必要がなくなったことを話した 壬琴さんは、そうなんですか、と言って、ありがとうございますと頭を下げてから去っていった 害のない人 → 戻 |