もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









各教室で説明があったのか、昼には私と怜奈ちゃんのことはすっかり周知の事実となり、私も事務の仕事を手伝うようになった
警戒されて当たり前だろうから、きっと重要書類は扱わせないだろうと思っていたのだけれど、予想に反して書類の中に入っていた
だからと言って、誰かに教えたりなんてしないから、私の中では書類に分類されちゃうんだけど


「壬琴さーん、すみません、これも手伝ってもらえますかー?」
「はーいっ」


主な仕事内容は小松田さんの手伝い
どうやらあんまり得意じゃないみたいで、仕事は沢山あった
怜奈ちゃんは向こうで料理が上手だったから、食堂のおばちゃんのお手伝いに入らせてもらっている
それでも、電化製品なんてないから、切るだけとかになるのかもしれないけれど


私が小松田さんにもらった仕事が終わったとき、かーんと鐘が鳴った
日の高さから、放課後らしい
私は終わっていた書類の中から職員室へまわす書類を選び腕に乗せた


「小松田さん、職員室に書類届けてきます」
「ありがとうー、よろしくお願いします」


小松田さんに一声かけると、私は職員室への道を歩きだす
すると前の方に水色の制服を着た集団が見えた
その制服の集団は、走ってきて私の前で急停止すると、目をきらきらとさせて一斉にしゃべり出した
私は圧倒されて目をぱちりと何度か瞬かせたが、とりあえず聞こえた言葉に返すことにした


「えーと・・・名前は壬琴。狼だったよ、昨日まで。委員会はよく会計委員に居たから・・・団蔵よく遊んでくれたよね。火薬庫は近くだと鼻がむずむずするから狼のときはあんまり近寄らなかったかな。おんなじ理由で火器もあんまりしらないの。なめくじは嫌いじゃないよ。絵はあんまり上手くないんだけど、算盤と文字はそれなりにできるかな。特技は・・・言っちゃったけど算盤と習字。食べ物は甘いものが好きだけれど、好きなものばかり食べるのは良くないと思う。後バイトは・・・それは昨日まで狼だった私に聞くの?・・・強いて言うなら今の事務のお仕事がバイトみたいなものだけど・・・。動物と話できるかっていわれると普通にできるよ。」


11個質問に答えたかなーと答えを指折り数えて、一斉に喋られたのを聞き取れるとか・・・狼になってから結構いろいろできるようになってるなぁと思った
その集団・・・団蔵が居るからは組のみんなは目をきらきらさせて、すごーいっ!と声をそろえた


「土井先生みたいですね!」


ふわふわ髪の男の子・・・乱太郎かな、が言った言葉に私は苦笑して返した



ひだまり1年生








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