もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









左門を作兵衛に預けてから、私は5年のみんなに呼ばれて、濃紺の制服に混じった
それは怜奈ちゃんも一緒にで、みんなはほんの少し良い顔をしなかったけれど


「壬琴、結局その子は誰なんだ?」


三郎がひじをついた手に顎を乗せたままそう言った
三郎のその体制に、雷蔵が行儀が悪いよと言葉をかけている
私はそんな二人を見ながら苦笑して説明した


「この子は黒須怜奈ちゃん、私の前の世の友達だったんだよ」
「あ・・・はじめまして・・・」


おずおずと私の紹介に続けて頭を下げた怜奈ちゃん
ハチがそんな様子を見て一言


「なんか小動物みたいだな」


そう言って私をちらりと見た
その視線を感じた私は、私今狼じゃなし、人間食べないもんっ!と叫んだのだった



―――――
side:文次郎



視界の端にちらちらと映る青白い髪
俺は落ち着かなくて、思わず舌打ちをしていた


「どうした、やけに苛ついているな」
「なんでもねぇよ、気にすんな」


一緒にいた仙蔵に指摘され、言葉を返したものの、仙蔵は意味ありげに笑みを浮かべた


「まあ精々悩むんだな、私は見物と行かせてもらおう」
「何のことだ」


仙蔵は気にするな、こちらの話だ、とだけ言って、席を立った
そろそろ行かないとまずいようだ
俺も残り少なかったおかずを口に放り込むと、食器を片づけるため席を立った


5年に混じる壬琴は、笑顔を浮かべて楽しそうにしているのが、視界の端に見えた



訳も分からずに










- 29 -