もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ








私がそう声にだすと、角に居た影はそろりと顔を出した


「左門?」
「な、何で名前を・・・」


壬琴です、と言えば、狼の?と返ってきて、私はこくんと頷いた
左門は私をまじまじと見て、言われてみるとなんだかそんな気がする!と言った
そして左門は私の手をがしりとつかむ


「こんなところにいないで食堂にいこうっ!」


そう言って走りだそうとした左門を、私はあわてて止めた


「左門っ、そっちは食堂じゃないよ!」


お約束過ぎる方向音痴の発動を私は必死に止めて説得すると、改めて食堂に向かった





気は進まなかったものの、腹をくくって左門、怜奈ちゃんと食堂に入れば、ひしひしと感じる好奇の視線
慌てて萌黄の制服を来た少年・・・確か一度あったときに作兵衛と呼ばれていた子が近寄ってくるのが見えた


「お前、どこ行ってたんだ!」
「作兵衛、壬琴が人間になったんだ!」


唐突に前触れもなく左門は作兵衛にそう言った
心なしか声が弾んでいて、目も輝いてる気がする
作兵衛はわけがわからないという顔をして、こちらを見た
私は困ったようににへらーと笑い、怜奈ちゃんは私の後ろにさりげなく隠れた


「・・・・本当に狼の?」
「あれ、覚えてるの・・・?一瞬だったのに・・・」


あの時は・・・・



「左門!どこいったんださもーん!」


【・・・あれ、なんか聞こえる・・・左門、迷子?】
「それでな、三之助と一緒に・・・壬琴?」


かぷりと袖をくわえて、声のする方に引っ張る
すぐ近くまで着いたとき、丁度その声の主が居て


「あ、作兵衛!」
「左門っ、おま、どこにいたんだよ!探しただろ!」
「壬琴と話してたんだけど途中で袖くわえられて引っ張られたんだ!」


作兵衛と呼ばれた少年は、しゃがんで私の目線にあわせると、頭をなでてくれた


「そうなのか・・・ありがとな」


「あのときの狼・・・壬琴だったか?」
「そうそう、壬琴です」


上から下までじーっと見つめて、作兵衛は、色が同じなんだな、と呟いた
私はそうなんだよー、と返して、にこりと笑った



セカンドコンタクト









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