女の子が降ってきた 私は、その顔を見て息をのむ 「・・・怜奈、ちゃん・・・?」 小さく名前を呼んだ 黒須怜奈、それは私が死ぬ前の、大切な、友達の名前 けれどそれよりもなんだか幼い気がして私は違和感を感じた けどその前に、私にはやることがあった 「壬琴、そいつを離せ」 「やだ」 怜奈ちゃんに似たその子は気絶していて、けれど文次郎たちにはただの侵入者 私にはなんだか、この子を守らないといけないとそんな気持ちを持った だから、みんなを説得しないといけない ぎゅっと抱きしめて、私は抵抗の意を示した 「壬琴!」 「やだ・・・っ!」 その騒ぎを察知したのか、黒い忍者服の人・・・先生が来た 私も知ってる、山田先生だ 「学園長が呼んでいる、その子も連れて行きなさい」 警戒の雰囲気を漂わせたまま、山田先生はそう言った 私は女の子を抱き締めたまま立ち上がった 受け止めたときに軽いと思った体は、やはり軽かった 学園長の庵で、私は眠ったままの女の子を隣に寝かせて、頭を下げた 文次郎たちにとって、私はよく知る人、けれど、私も女の子も、学園長先生を含めた殆どの人にとっては知らない人だ そんな私が、そう簡単に、しかも忍者を育てる学校の人々に信じてもらえる確立など、相当ないに等しいだろう 心臓がばくばくと音を立ているのがわかった 学園長の息を吸う音が聞こえ、静かな庵に音が響く 「して、何者じゃ?」 「先日より、学園に置かせていただいています、狼の壬琴と申します」 「狼じゃと?おぬしはどう見ても人間であろう」 私は面を下げたまま、仰るとおりです、と返した そうして、私自身未だなぜ人の身であるのか、分かっていない、とも その言葉に、学園長のふぅむと言う考える言葉が聞こえた 「とにかく、顔を上げなさい、そのままでは喋りにくいじゃろう」 「ありがとうございます」 学園長の言葉に、私は顔を上げ、背筋を伸ばした 考えろ、どうすれば私も怜奈ちゃんもここに残ることができるのか 私は無い頭をフル回転させて考えた 学園長は何かを待っている ・・・これは、私が話し始めるのをまっていると考えるべきなのかな 「・・・私は、元々この戦乱の世よりも数百年後の人間でした。平成と言う名のつけられた平和の世で生きていました・・・・不慮の事故で死ぬまでは」 私はつい、と視線を隣へ向けた 未だ目を閉じたままの彼女は、穏やかな寝息を立てている 「彼女がどうしてここにたどり着いたのかわかりません、けれど、私の以前の記憶に居る友と面影が良く似ており、また服も平成の世でよく見かけるものですから、数百年後の未来から来た人間でしょう」 私は女の子へと向けていた視線を学園長へ戻した その目をきちんと見つめて、嘘偽りない、不思議な出来事を話す 「私が生を終え、ふと目を開けた時、私は既に狼でした。死んだときの痛みも光景も覚えていた私は相当混乱しましたし、世が違うことにも戸惑いを感じました。けれど一度死んだのだからと狼としての自分を受け入れ、母狼と共にこの忍術学園へとたどり着き、この学園の生徒である潮江文次郎となぜか会話ができたため、忍狼としてこの学園に留まらせて頂いていました」 「それでじゃ、なぜ人間になったのかは分かってるのかの?」 「そちらはまったく・・・起きたときには既に人間で、着物は生物委員の方に貸していただきました」 ふぅむとあごに手を当てて、学園長先生は考えている そのとき、ぴくりと隣で気配がした 隣に視線を落とせば、その瞳が薄く開いていた その瞳が開くとき → 戻 |