もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ








とりあえず、5年のみんなには私の存在が認識されて、一安心した
まあ、よく信じたなぁと我ながら思うんだけど・・・
怪しいもんね、普通は


「そうだ、そのままはマズイけど・・・着物って俺のだとでっかい・・・よな」


私の身長を見て、ハチはそういった
元々低い私の身長は、相当低くて・・・最後の身体測定は151だったかなぁ・・・それくらいしかなかったんだけど・・・
伸び盛りの男の子と比べたら、多分相当低いと思う


「これくらいの身長だと3年生とかじゃないか?」
「3年生・・・あ、孫兵とか・・・無理ですか?」


私がそう提案すれば、ハチはそうだな、生物委員だし、と同意して、じゃぁ、借りてくる、と小屋を出ていった
残された私は5年の4人を見た
4人も私を見ると
じぃっと見上げると、茶色のふわふわ髪・・・雷蔵?が私の頭をなでた
気持ちがよくて、私は狼のときと同じように目を細める
そんな私を見て、もう一人のふわふわ・・・三郎が笑った


「人間なのに、人間らしくない仕草があるんだな」
「でもなんか可愛いんじゃないかな、そういうの」


髪が独特な…勘ちゃんってよばれてた人が、三郎の言葉に笑った


「私雷蔵の撫で方すきだよ、ハチはぐしゃってなるから後で絡まる・・・」


その後虎若がとかしてくれるけど、と私が言えば、兵助ってひとがハチらしいなと笑った
そうしている内に、ハチが戻ってきて
・・・何でか分からないけど、孫兵と文次郎まで居る
孫兵は私を本当に人になってるんだねと言って、ジュンコ姉さんは壬琴は美人さんねと誉めてくれた


「ハチ、孫兵はわかるけど、潮江先輩はどうして?」
「会ったから連れてきたんだ」

や、会えるのは嬉しいけど、でも何も今の状態じゃなくても・・・
という思いは飲み込んで、そうなんだ、とだけ返した
私は着物を受け取ると孫兵にありがとうと言って、きょろりと小屋の中を見回して
・・・あれ、着替えるところないよね?
みんなのほうを振り返れば、そこにいた人影はなくて、私は扉に背を向けて着替えをした


「・・・帯ってどうやって結ぶんだったかな・・・」


呟きながらも進む着付け
おばあちゃんに教えてもらった着物の着付けは、こんなところで役立つことになった
伝統を重んじるおばあちゃんだったから、お祭りは必ず浴衣で、初詣も着物だったんだよね、懐かしいなー
それでも、戻れないのだけれど
ホームシックにならないのは、みんなのおかげなのかな

くすりと笑いをこぼして、私は小屋の外へ出た




おばあちゃんの知恵









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