もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ








とりあえず、ハチにかくかくしかじかと事情を説明してみた
もちろんすぐに分かってくれるとは思ってなかったんだけど、ハチは寛大で、不思議な事もあるんだなの一言で終わってしまい、逆に私が拍子抜けしてしまったくらい
なんでも、前から狼にしては賢すぎると思っていたから逆に納得したらしい


それで、困ったのは私をどうするか
女だから忍たまにはなれないし、かといってくのたまに入れるのだって、いつまで人間の姿なのかまったくわからないから難しい
狼たちと一緒にすごすといっても限度があるし・・・と考えて
ふと思った
事務員とかってできないものだろうか、と
私は習字を習っていたおかげで行書の字も読めるし、算盤をやっていたから計算もできる
料理は正直、こっちのかまどとか使えないだろうから反対にお荷物になるだろうし
その点、事務員なら書類整理なんかが面だった仕事だろうし、私でもできるんじゃないかと思った

しかしそれを伝えようと思ったそのとき、不意に外に誰かの気配がした
座り込んでいたままだった私は、立ち上がると入り口から見えない位置に移動した
ハチはそんな私を少し不思議そうに見たが、すぐに後ろからハチーと呼ぶ声がしたことに納得したようで、後ろの声になんだーっと言葉を返していた
私は居ることがばれないように息を潜める

けれどその努力は無駄なものになった
ひょいと覗いた茶色の髪の子と目があった


「・・・」
「・・・」


私はゆるーく笑った
ど、どうしよう・・・
その子は一拍おいて、後ろを振り向くと叫んだ


「ハチっ!いつの間に女の子連れ込んだのっ!それも部屋じゃなくて生物小屋ってどう言うこと!かわいそうでしょ!」


そのセリフにあわてたのは私の方だ
連れ込んだとかいろいろ誤解してるし、そもそもこれはハチのせいじゃないし・・・っ
とそう思っても、私はどうしようもなくて
なんだとぞろぞろ入ってきたハチの友達に、私は近くにいた蒼兄にぎゅっとしがみついているだけだった
あ、蒼兄にしがみついてるのは少しでも醜いからだを隠すためです
布一枚とか目に毒だし




絶体絶命・・・なの?









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