もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ






side:文次郎


竹谷が帰ってきた
けれど、そのそばに壬琴の姿は無く
竹谷自身、なぜか焦ったような表情だった


「どうした?」
「潮江、先輩・・・」


嫌な、予感がした


グルル、とうなる声がした
竹谷の後方には、血に染まる壬琴


「・・・っ!」


竹谷がクナイを構える
殺すのか?壬琴を?


あのね、私・・・もっとずっと先の未来で、私は死んで、血がたくさん流れてたのが私の最期の記憶だったの。それで、暗くて温かい場所にいたのが私の最初の記憶
私は人間だった頃の私を忘れたくない・・・けど、この忍術学園にいるためには役に立たないといけないから・・・
・・・文次郎、私がんばる、がんばって克服する、それで文次郎の役に立つよ
うん、また遊びに行くね



「・・・・壬琴!お前は・・・・!」


人で、ありたいんじゃなかったのか――――




―――――
side:壬琴



学園に着けば、ちゃきりとクナイを構えるハチがいた
・・・殺されるの?何で?
私・・・・・・どうして?
殺しちゃえばいい

私、がんばったよ、なのに、ほめてくれないの?
その首に牙をつきたててしまえば


「・・・・壬琴!お前は・・・・!」


文次郎?何でそんな顔してるの?
なんか、辛そうだよ?
文次郎もほめてくれないの?私がんばったの
ねえ、人を殺したんだよ
・・・・あ、殺したから駄目なの?
でもほら、役に立ったんだよ
ねえ、どうしてそんな怖い目で私を見つめるの?


「潮江先輩、壬琴は駄目です、置いておいたら危ない・・・!」
「だが・・・っ」


嫌だ
なんで
どうして
私は
殺される
死ぬの?
また?
新しい生を受けたのに
役に立とうと思ったのに



ど う し て !





人にも狼にもなりきれない"私"









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