「いいか?暗殺のときは気配を悟らせず、確実に一発でしとめるんだぞ」 【うん、分かった】 私はわふ、と小さく声をあげて返事を返した ハチはいい子だ、と頭をなでてくれた 私はぱたりと一つしっぽを振り、前に見える標的・・・山に住み着く盗賊の一人を見据えた ごめんなさい、と心の中で謝り、私は気配を殺して盗賊に近づく そして、私は一気に首にかみついた ぐきり、と口の中で音が鳴る 血の味が口いっぱいに広がり、鉄を噛んだみたいだった 私の中でぷつりと何かが切れた音がした気がした ――――― side:八左ヱ門 遠くから見ていた俺は、上手く仕留めた壬琴を見て、帰ってきたら思いっきりほめてやろうと思った しかし、その後すぐに戻ってくるはずだった壬琴は、なぜかそのまま物言わぬ死体の横で座っていた 俺がおかしいと思ったそのとき、壬琴は走り出した 俺は慌てて走り出した壬琴を追う その先には、別の盗賊の姿 壬琴はそのままその人影に噛みついた しばらくして、その男は崩れ落ちた このままじゃまずいと感じた俺は、すぐに壬琴をとめようと動き出した しかしそれは既に遅く 「グルルル・・・・」 警戒している―――― 壬琴は空色の瞳を赤く染め上げ、美しい青白の毛並みを血で汚していた こちらを見る壬琴の瞳を見たとき、俺はぞわりと背筋に冷たいものが走った 光の無い濁った、それこそ血に餓えた殺人鬼のような マズイ そう思った 俺はすぐに鼻を効かなくするための煙をまいて学園に向かって走った ――――― side:壬琴 すべてが遠い ハチが去っていく あぁ、追いかけなくちゃ 全部殺さないといけないから だって学園に戻らないといけないから そうすればたくさん人が殺せるでしょ? 偉いってほめてくれるかな? だれが? あれ・・・私って誰だっけ 私は狼、だ さぁ、帰ろう、私が戻るべき場所に そこは平和な世界 → 戻 |