side:文次郎 朝、食事を食べ終わり、食堂を後にしようとしたとき、入れ違いで竹谷を見かけたので、俺は声をかけた 「竹谷」 「え、あ、なんすか?潮江先輩」 「昨日野良の狼を学園内で見かけたんだが、学園の世話になりたいらしい、構わないか?」 その分の経費はやる、というと、竹谷は少し驚いたような表情を作り、その後笑っていいですよ、と言った 「どんな狼ですか?」 「青白い毛の狼だ、母子のな」 「わかりましたっ」 これでいいだろう、と俺は少し安堵して、俺は食堂を後にした ――――― side:壬琴 【蒼兄!】 【ん、どうした?壬琴】 【あーそーんーで!】 私は蒼兄にぱふっと体当たりをした 蒼兄は嫌がりもせず私を構い倒してくれる お母さんはそんな私を見て嬉しそうだし、他の狼たちもほほえましそうな目でこちらを伺っている そんな時、小屋の戸が開いた 「お?こいつか?」 【ん?誰?】 【俺たちの世話をしてくれる人間だよ、ハチっていうんだ】 へーと蒼兄の説明を聞きながらそのハチという人間を見上げた 髪の毛がつんつんしてて、いかにも手入れしてないごわごわっとした髪っぽいそのハチは私の頭をがしがしとなでた 手をどけられると、私はふるふるを顔をふった 「あははっ、乱暴だったか?」 【乱暴だったけど、痛くはなかったよ】 私はハチに擦り寄った 学園の人はみんないい人ばっかりだ 山で私とお母さんを狙ってきたのが同じ人なだんて嘘みたい そこに、文次郎が来た 「いたか?」 【文次郎!】 ひょいと顔を覗かせた文次郎に私はタックルした 尻尾はきっとぶんぶん振っているだろう、そんな気がする 「壬琴、夜振りだな」 「その狼、壬琴っていうんですか?」 「あぁ、名前がないって言うからな、つけてやった」 私は文次郎に頭をなでられて目を細める 文次郎になでられるのは存外気持ちがいいんだー 【文次郎!遊んで!】 「俺はこれから委員会だ、竹谷に遊んでもらえ」 【・・・むぅ・・・わかった、我慢する】 「いい子だ」 そういうと、文次郎は出て行った 私はお母さんの隣に座り込む 「お前、潮江先輩がすきなんだな」 【好きだよ、名前くれたもん】 尻尾がぱたんと揺れた だってハチも言葉通じないんだもん・・・ 私は内心でそう呟いた 話せる人、話せない人 → 戻 |