もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ





side:伊作


食堂に行けば、小平太と長次が、留さんと共に待っていた
なんだかそわそわと落ち着かない小平太と、それを横目にじっと待つ長次
対照的だなぁ・・・
こちらに気がついた小平太が近寄ってきた


「なぁ、いさっくん、あの子の調子はどうなんだ?」
「・・・・・・」


長次も気になるのか、小平太を止めずにこちらをじっと見つめている
僕は安心させるように笑った


「大丈夫、ただの風邪だよ、いつもより軽いみたいだし、そんなに心配しないでも平気だから」
「そっかー、それはよかった!」


小平太は単純に喜んだ
けれど、長次はそうじゃないようで、僕はあいまいに笑った
長次はそれ以上期待しなかったのか、ふと眼をそらすと、小平太をつれて出て行った
留さんの向かい側に座ると、留さんは少し意外そうに僕を見た


「あいつら、・・・いや、小平太だけか、知らないのか?」
「うん、小平太は一番前線だし・・・篤葉ちゃんは実際仙蔵と作戦を練って、後は出ないでしょう?」


だから、きっと知らないんだよ、と言えば、そうか、と納得した返事が返ってきた
留さんも、文次郎も知ってる、篤葉ちゃん
でも、小平太だけは知らない

留さんは僕がよく看病してる子だから、それで知っているし、文次郎も仙蔵が同室だから、作戦を作るときに篤葉ちゃんがお邪魔しているみたいで、知っている
けれど小平太はあまりしゃべらない長次だし、長次も進んで篤葉ちゃんのことを話していないみたいだった

6年間、ずっと知らないというのも変な感じだけれど、篤葉ちゃん自身は実技に出れない分座学を凄くがんばってたから、それをあわせるととても平均的で、有名になることなんてなかったし、小平太と篤葉ちゃんはまるで対照的だった

座学はてんでだめで、その代わり実技が凄く得意で病気になどならないような小平太

実技ができず、その代わりに座学がものすごく得意だけれど体が弱くていつでも病気がちな篤葉ちゃん

そんな二人の共通点なんて、長次くらいしか居なかったのだ
けれどその長次も、進んで教えようとはしなかった、だからなのかもしれない
心配する様子が、変にいまさらだと思うだなんて




対照的な彼と彼女








- 5 -