私が眼を覚ましたとき、そこに長次の姿はなく、日は傾きかけていて 私が眠ったのは、まだお昼を食べてすぐだったから、ずいぶんと長い時間寝ていたのね、とまだぼんやりとした頭でそう思った 扉が開く音に、視線を向ければ、そこには雑炊を持った伊作くんが居た 「あ、起きたんだね」 「・・・いさ・・・くん」 喉が渇いていたのか、思っていたよりもかすれた声が出たので、私自身少しだけ驚いた 伊作くんは、私の体を起こすと、水を手渡してくれた 私はその水を飲むと、伊作くんにありがとう、と言った 「篤葉ちゃん、食べれる?」 「大分良くなったから大丈夫だと思う・・・多分」 「そう?よかった」 いつも季節の変わり目に引いてしまう風邪だったけれど、今回はあまりつらくはなくて さすがに6年目ともなれば、体もなれるのかなと少しだけ内心思いながら、持って来てくれた雑炊に手をつけた おばちゃんの料理はいつも美味しくて、そのうち私もこういう美味しい料理を作りたいと思うけれど、それを振舞う人はきっといないのだろう 「食べ終わった?これ、薬だよ」 「うん、ありがとう、伊作くん」 私が食べている間に用意してくれた薬を飲んで、私はもう一度布団に横になった 伊作くんに、寝るからご飯に行って大丈夫だとつげて、私は目を閉じた 伊作くんは、私が目を閉じるのを見て、医務室から出て行った ――――― side:伊作 医務室の戸を閉めて、僕はため息をついた 彼女は、果たして卒業まで持つのだろうか 風邪を引くのはいつものことだけれど、最初に会った時既に細かった体は、さらに細くなってしまった 篤葉は体が弱いから、実技にはなかなか出られないけれど、その分頭はとてもよくて、兵法にとても通じる子だから、仙蔵と一緒に指揮をとることが多かったけれど それもいつまでできるのだろうかと、不安になる 明日にも、死んでしまうのではないかと、そう思う儚さが既に彼女にはあるんだ 中に居るはずの篤葉を思ってもう一度ため息をつくと、僕は留さんが取っておいてくれているだろう夕食にありつくために、食堂へ歩いていった 儚い彼女 → 戻 |