もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

それさえも乗り越える力があると信じているのです







その日は確実にやってきた
確実に篤葉の身体を蝕み、死の淵へ追い立てる


「篤葉・・・がんばれ・・・っ」
「こ、へ・・・た・・・」


ぎゅっと篤葉の手を握りながら、小平太はそう言った
弱々しいながらも、篤葉が応える
きっと篤葉の体はもうぼろぼろで、この冬にでも墓にはいるのではないかと、ひそりと言われていた
それでも、彼女は未だ此処に在る
それはきっと、篤葉の頑張りでもあるし、周りのおかげでもあるのだと、俺はそう思った

幼い頃からともに在った篤葉
長く生きられないといわれ続けて、早15年
近くで見てきた彼女は、いつの間にか少女ではなく女性になっていた
確実にそうしたのは友である小平太で
今の彼女を支えるべきは小平太であると分かっている


だが


「ちょーじ・・・?」


俺は小平太の隣に座って、篤葉に囁く
篤葉は嬉しそうに頷いた
小平太はなんだか分からない様子で
そうしている内に、篤葉は眠ったきっと、これで目覚めなければ、もう目を開けることはないだろうと思いながら



―――――



篤葉が静かに眠り続けて、今日で2日
そろそろ、起きなければ、篤葉はきっと・・・
そういって唇をかんだのはいさっくん
私は毎日、医務室に通っていた
そして、篤葉の顔を見て、その額に接吻してから委員会へ行くのだ
片時も離れない篤葉の顔に、私は本当に篤葉を愛しているんだなと実感すると共に、それを言うべき篤葉が目を覚まさないことに、不安を感じてならないのだ


今日も、篤葉を見たら、委員会に行くつもりだった
でも、私はなんだかそれじゃいけない気がしたんだ
急いで集合場所に行って、滝夜叉丸たちに今日の委員会をなくすと伝えて、ばたばたと医務室に戻った





戸を開ければ、そこで篤葉が笑っていた







「篤葉っっ!」


私は嬉しくてたまらずに、篤葉をこれ以上ないくらい優しく、それでもきつく抱きしめた
篤葉は起きたばかりだからかぼんやりとしていたが、それでも私の背に手を回してくれた
「こへいた・・・ただいま・・・」
「おかえり、篤葉」






―――――



その後の二人?
幸せそうだったよ、とっても
卒業してから何処にいるのかって・・・、それは秘密だよ
でもね、一緒に見守ってくれてありがとう
きっと篤葉が元気になったのもみんなが居てくれたからだよ


いさっくん!


あ、呼ばれちゃった
それじゃ、またどこか、戦場以外であえるといいね







それさえも
乗り越える力があると
信じているのです







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