真っ暗な闇は、私に暖かかった このまま私が留まれば、それは死ぬと言うことなんだろう、と頭の片隅で感じた けれど、この暖かい空間にいる間、私の体の痛みや苦しさはすっかり無くなっていて みんなを迎えなきゃと言う気持ちや、生きなければという思いは、持っているはずなのに、それを思い出して動くことは億劫になっていた けれど 「・・・篤葉・・・っ篤葉!目を覚ましてくれよ!」 呼ばれた気がした あれは誰の声だった? ・・・あ、そうだ・・・ 私は、暖かい空間を振り切って、重たい意識を浮上させた 最初に見えたのは、木の天井と、破顔一笑した小平太くんの顔 「・・・っ篤葉!」 「こ、へいたくん・・・?」 周りを見れば、6年生がみんな勢ぞろいして、三反田くんと新野先生がほっとした表情をしていた 「・・・おかえり、みんな」 私がそう言えば、留三郎くんは呆れたように、伊作くんは安心して、仙蔵くんは困ったように、文次郎くんはふいっと照れ隠しのようにそっぽを向いて、長次はいつもの彼よりもここなし柔らかな雰囲気で言った 「おま・・・っ、最初の一言がそれかよ・・・」 「意識戻ってよかった・・・っ」 「まったく、心配をかけさせるな」 「体が弱いのに無理をするからだ、バカタレ」 「・・・よかった」 そしてすぐとなりにいた小平太くんは・・・ 「篤葉っ」 唇に掠めるように何かが当たった 私はえ、と声を上げて、みんながあ、と声を上げた 「私は、篤葉が好きだ!」 だから、卒業したら私の妻になってくれっと言った小平太くんの顔は真剣で 私はうろうろと視線をさまよわせた後、小さく呟くように言った 「いつ死ぬか分からない私で、いいの・・・?」 「篤葉だから、好きになったんだ、篤葉じゃないと私は嫌だ」 だから、私の恋人になってくれ、という言葉に、私は嬉しさと恥ずかしさが入り混じって、頬を赤く染めた そして、小さな声で、けれどしっかりと、はいと答えた 黄花玉簾 「貴方を愛しています」 戻 |