もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ





side:伊作



「それ・・・本当になのか・・・っ?」
「嘘じゃないよ・・・今日頼まれた薬は、前に作ってたのよりも強くなってる・・・」



小平太は信じられないという顔をして下を向いた
早く気がついて欲しかったんだ
だって僕は二人に幸せになって欲しいから


小平太は顔を上げると、決意を固めた、そんな顔をしていた
そして立ち上がると、篤葉のところに言ってくる!と言って走っていくのを見送って
僕は留さんと顔を見合わせた


「・・・幸せになれればいいんだけどね」
「本当にな」


そうして、篤葉ちゃんが少しでも長く生きてくれればいい




―――――



医務室を飛び出して、私は篤葉のところに行こうとした
けれど私が見たのは仙ちゃんと歩く篤葉で
それを見て冷水をかぶせられたような気がした


―― 篤葉は、私をどう思っているんだ・・・?


そう言えば、医務室で篤葉を見たとき、篤葉はなんと言っていた?


―――墓場まで持っていくよ。ずっと、私はそうすると決めていたから・・・―――


持っていくって、何を?
・・・誰かへの感情?
なら、篤葉は誰かに恋をしているのに、私が篤葉に好きだと言って、それで駄目だったら?
篤葉はもっと遠くに行ってしまうのか?


そう思ったら、私はそれ以上動けなくて
ただ、二人で歩く仙ちゃんと篤葉を見ないように、そちらに背を向けるだけだった




―――――
side:仙蔵



「小平太くん・・・?」


少し遠い後ろ姿に、篤葉が呟いた
私はふっと笑んで、からかうような口調で言った


「本当に、篤葉は小平太のことが好きだな。さっさと告白してしまえばいいものを」
「・・・仙蔵も、知ってるでしょう?」
「あぁ、知っているさ、知っているからこそ幸せになったって罰はあたらんだろう?」


篤葉はだって、と言葉を続けて、けれどそのまま言葉が続くことはなかった
どう見ても両想いであることはわかるのに、なぜこれだけ鈍いんだこの二人は
それ以外のことは鋭いくせに・・・


「・・・行くか?」
「あ、うん・・・そうだね」


本来の目的・・・今度の忍務の作戦を立てるため、私は篤葉と共に部屋へ向かった





葛藤







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