もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









僕は数馬と抱き合った
そうしてどちらからとも無く口吸いをする
離してから瞳を覗き込めば、その奥には狂気の炎がちろちろと燃えていた


「さぁ、始めよう」
「最期の僕らの大仕事」


僕らはそうしてその身に狂気を纏った
二人で一緒に、天女様の元に行く



「天女様」「凛奈さん」
「どうしたの?」



にこりと笑っていつもどおりの笑顔で振り向いて
でもその笑顔はすぐになんだかこわばった
僕らはにこりと笑った



「あのね、僕ら考えたんだ」
「狂った場所を戻すにはどうしたらいいのかなって」
「それで思ったんだよ」
「狂った場所を戻すのは、狂った人じゃないとダメかなぁって」



ねぇ、天女様も、狂ってるもんね?
僕ら一緒だよ、だから一緒に逝こう?
天女様は顔を真っ青にして悲鳴を上げた
でも助けなんてこないうちにその首をはねて、僕らは盛大に血を被った



「凛奈さん!?」



悲鳴を聞いて駆けつけてきた生徒達
そうしてこの状況を見て息を呑んだ



既に事切れて倒れている天女様
血を浴びて抱き合いながらたたずむ僕と数馬

けれどその顔は狂気に染まり、互いのクナイを互いの首に突きつけて



「三反田・・・・九条・・・・・?」
「くすくすっ」
「あはははっ」


ねえ、先輩、狂った世界は楽しかったですか?
僕らは狂った世界にのめり込めなくてはじかれちゃったの
だから僕らは狂った世界を戻すために狂ったんです
でも僕らの役目は終わったからここでおしまい!


狂気の瞳はみんなからそらないまま、僕らはお互いに言い合った


「ね、数馬、あいしてるよ」
「僕も凛を愛してるよ」
「一緒だね」
「そうだね」
「だから死ぬときも二人で一緒」
「逝くときも二人で一緒」
「「ずーっと、一緒だね」」


そうして口吸いすると、そのまま一緒にお互いの首を掻ききって、そうして僕らは世界と決別した




狂気と依存の果てに









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