もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

立夏






「俺が帰ってきてから3ヶ月過ぎたなぁ」
「え、睦月くんってずっといる人じゃなかったの?」


タカ丸さんがきょとーんとして言った
あー、タカ丸さんしらなかったんだっけ


「俺2年になる前に放浪の旅にでて、ししょーにくっついてあちこち回ってたんだー」


だから戻って来たのってタカ丸さんが来たちょっと前なんだ、と話すとへーっとタカ丸さんが言って、その後、何だか嬉しそうにえへへーと笑った


「じゃあ、睦月くんと僕はお揃いなんだねー」
「編入生仲間?」
「そうそうー」


同じ部屋だし、縁があるよねー
と笑った


「おーい、睦月!」
「あ、竹谷先輩だ」


ふにゃふにゃとした空気が俺たちに流れていると、向こうの方から竹谷先輩が走ってきた


「お前、委員会忘れてただろっ?」


そのセリフに、俺は3秒ほどおいてから、おぉ、そうだったーと呟いた
先輩は俺に虫取り網を渡すと、毒虫が逃げたんだ、と言った


「おまえ捕まえるの得意なんだから、ちゃんと委員会着てくれ」
少しお疲れ気味の竹谷先輩
仕方がないから先輩のためにちゃんと集めよう


「ちょっと待ってくださいねー」


俺はそういうと指笛を2度鳴らした
すると、たくさんの羽音が聞こえてきた
毒虫達の羽音だ
タカ丸さんと竹谷先輩は顔色を悪くした


「・・・な、なんか多くない?」
「や、まぁ確かにあれくらい居るって言えば居るけど、睦月はなにしたんだよー・・・」


俺はにこにこと笑って、毒虫達に、おはよう、散歩は楽しかったー?そろそろ戻ろう、と声をかけて、歩き出した
が、竹谷先輩がついてこないことに気づき、くるりと振り向くと


「せんぱーい、早くいかないと、俺置いていっちゃいますよー」
「お、おぅっ」


こちらに走ってきた竹谷先輩の向こう側に、俺は手を振った


「タカ丸さーん、また後でー」「あ、う、うん、また後で、ねー・・・」


何故だか困った感じのタカ丸さんに見送られて、俺と竹谷先輩は飼育小屋へと向かっていった



立夏

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