もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

小暑






俺は長屋の廊下に大の字に寝転がってだれてた


「・・・あっつい・・・」


正直、そうとう着崩してて、見られたら怒られるだろうことは予想がつく
今日はいつものようにかまってくれる人もいなくて、暇だから余計に気になるのかもしれないなぁ・・・
俺はぼけーっとじりじりと肌を焼く太陽に当たっていた
昼間になる前にさすがに部屋に引っ込んだけど、日陰はまだマシになるだけで、暑いのには変わらない
のろのろとした動きで畳の上をごろごろしながら、俺はひたすら暇を持て余していた


「あ」


そうだ、暑いなら水の近くに行けばいいんだ、と思った俺は、手拭いを持って裏山の滝壺に行こうとした


「睦月くーん?外にでるなら出門表にちゃんと書いてもらわないと困りますよー!」
「あーそうだった、ごめんね、小松田さん」


俺は小松田さんの持ってきた出門表に名前を書いて、裏山の滝壺に向かった





滝壺はそんなに広くなくて、水遊びにはもってこい
よく1年生のときに遊んでたなぁ


「懐かしいな・・・・」


私たちが出会ってから、既に4年の歳月が流れているんだと思うと、なんだか不思議な気持ちになった
まあ、タカ丸さんは違うんだけどさー

ぼーっとしたり、もぐってみたりとして時間をつぶしていると、動物の気配がした
そちらを向けば、集まってきたのは狼だった


「お?」


右目に傷
その狼がリーダーのようだったのだが、その傷には見覚えがあった


「炎牙!」


ばしゃばしゃと水しぶきをたててそいつに近寄れば、擦り寄ってきた
炎牙(えんが)は1年生のときに助けた狼だった
わしゃわしゃとなでながら、俺はそっか、群れの主になったんだな、と呟いた





「あぁっ!睦月くんどこいってたの!」
「どこかー」
「そういうことじゃなくて・・・」


学園に帰ると、丁度会ったタカ丸さんがはぁーっとため息をついた
何なんだろうなぁ・・・俺は今意外と機嫌がいいんだ、炎牙にあったから
今度からまた遊びにいこうと思う
で、今はタカ丸さんなんだけど、俺の手を取ると、早く行こうっといってどこかに連れて行こうとした


「タカ丸さん、どこいくの?」
「滝くんと喜八郎くんと三木くんのところだよ」
「滝と綾と三木?」


何でだろう、今日は全然構ってくれなかったのに
不思議だったけれど、俺はタカ丸さんに手を引かれるまま歩いた
食堂に入ると、お誕生日おめでとう!と一斉に言った生物委員の竹谷先輩や孫兵、一平や孫次郎、三治郎、若虎、それに滝、綾、三木が居た


「え、あ・・・ありがとう?」


俺はビックリして目を瞬かせた
綾はだぁいせーこうと嬉しそうだし、滝と三木もなんだか仲がよさげだ
孫兵は自分からジュンコさんに触らせてくれたし、1年生ズはくっついてきて
あれ、俺なんか幸せ?



小暑





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