もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

死に目すら会うことは叶わず


「茜先輩・・・」
「そんな・・・っ」


少女が黄泉へ誘われたその日
くのたま達は深い悲しみに包まれた
彼女達は愛し、尊敬した先輩を綺麗に着飾り、みなで天へと登っていく煙を涙して見送ったのだ
その遺骨は既に彼女の両親の元へ送られ、くのたま達の手元には、少女が使用していた数々の品が形見として残るだけだった
・・・少女は確かに愛されていました、愛され、尊敬され、良き先輩であったのです



―――――



「瑠依さん・・・!」
「身勝手な私を許してね・・・はっちゃん、私、幸せだったよ・・・!」


瑠依さんは本当に天女様だった
光に包まれて、瑠依さんは世界から"消えた"
そうして思い出したのは、俺の愛しい人


「・・・茜」


どうして俺は別れてしまった?
あんなにも愛していたのに、瑠依さんよりも長い時を過ごしたのに


「ハチ・・・?」
「・・・俺、くのたまの方行ってくる!」


茜に会って来るんだ、それで謝って、もう一度・・・―――
そう言ったときに、三郎が一瞬顔を強張らせていたことに、俺は気づきもしなかった




「あ!なぁ、茜知らないか?良ければ読んで欲しいんだけど・・・」
「・・・・あなたなんて・・・・っ!」


俺がくのたまと忍たまの境目で、丁度通りかかったくのたまの子にそういうと、その子は敵でも見るような目で俺を睨んできた
そしてあんたなんか・・・っと言ってくのたまの子は走り去ってしまった
・・・何かあったんだろうか?
そういえば、茜と別れてから、全然茜の姿を見なくなったなぁ

そんなことを思っていたら、後ろから三郎が来た


「ハチ」
「ん?どうしたんだよ、三郎」
「良く聞け」


――― 空峰 茜は、死んだ ―――


「・・・・え?」


茜が死んだ?
それってどういうことだ
嘘だよな、だってあの日、茜は笑って俺のことみて・・・


「ど・・・・うして・・・どうしてだよ・・・茜・・・!」


三郎は、自分で考えろ、と残して去っていった
俺はただ、うずくまって泣くだけだった
閉じたまぶたの裏には、茜の笑った顔が浮かんでいた




に目すら会うことは叶わず