もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

タイプを聞かれて君の特徴を言った




授業も終った放課後
私はくのたまの友達と食堂で話しに花を咲かせていた
囲む机の上には、おばちゃん特性のみたらし団子
女の子だから、やっぱり三禁であると分かっていても、恋に恋するお年頃で、自然とそういう話題になる


「いいなぁ、恋人がいる子は、羨ましいー!」
「えー、そんな事いったって、アンタも卒業したら故郷の恋人と結婚するんでしょ?」
「うわっ、何で知ってるの」


きゃいきゃいと話す彼女達に、私はにこにこと笑みを浮かべながら聞く
私自身は恋人も婚約者も居ないけれど、みんなの恋話を聞くだけで、正直おなかがいっぱい、ごちそうさまです、って感じ


「あ、ねぇ、茜はいないのよね、恋人も婚約者も。でも、好きな人くらいいるんじゃないの?」
「え?私はみんなの話を聞いてるだけでおなかいっぱい、恋人なんて作ろうと思ったことないよ」
「もー、ホント欲が無いんだから!」


ぷりぷりと怒る親友に、けれどその怒り方も本気で怒ってるわけじゃなくて、ただのからかいだって言うのはこの5年間できちんと理解している
だから、私自身もはいはいと流すだけで終るのだ
けれど今日はそれだけでは終らず、他の友達がきらりと目を輝かせた


「恋人がいないのも好きな人が居ないのも分かったわ、でも茜、好きなタイプくらいあるんじゃないのっ?」


その言葉があまりにも必死というか、そういう感じだったので、私は思わず苦笑を浮かべる
きっとこれは、言うまで離してくれないんだろうな


「うーん・・・強いて言うなら・・・」
「言うなら?」
「明るくて、面倒見のいい人、かな」


そう私が言えば、意外と普通ねと返ってきた
ズバズバと意外と失礼だ、それがくのたまなんだけれど
そうこうしているうちに、みたらし団子はお皿の上から消えて、私たちのお話もそこで終わりになった





その夜
月が綺麗で、どうせだからと月のよく見える木の上の、太い枝に座っていた
ころり、と手で転がすのはビー玉というガラスの玉
まだ入学してすぐの頃に、ハチから貰った、大切な宝物
それを月にかざせば、きらりと光る
ふと、気配を感じて、そちらに目をやれば、そこにはハチの姿


「こんばんは、どうしたの?」
「ん・・・なんでも、ない・・・とはいえねーんだけど・・・」
「・・・はっきりしないなぁ」


とりあえずこっちおいでよ、と声をかければ、頷いて登ってくる
そしてよっこらせ、とやけにおじさんくさい言葉とともに、すぐ近くの枝に座った


「なぁ、昼間に食堂居たよな・・・?」
「あ、聞いてたんだ」


なにを話し出すのかと思っていたら、いきなりそうハチが切り出して、私はあっさりとそれを認めた
別に隠すようなことなんて話してないし、ただののろけ話ばっかりだったから、男から見たらそんな面白いものじゃなかったと思うけれど
私はハチに、それでどうしたの?と聞けば、ハチはなんだか言いにくそうにあー、とかえーととかもらしている


「茜は、どんなヤツがすきなんだ?」


どうやら私のは聞いていなかったらしい
私はくすりと笑う


「明るくて、面倒見がいいの。動物が好きで、よく後輩のペットを探し回ってて、タカ丸さんに、よく酷い髪の毛だって追いかけられてるような人、だよ」


ハチの方を向けば、ぽかんとしていて
けれどはっと我に返って顔を赤くした


「・・・それって・・・その・・・」
「・・・ハチは鈍いの?・・・好きだよ、ハチ」


きっとそういった私の顔も、ハチみたいに真っ赤なんだろう




タイプを聞かれて君の特徴を言った





―――――
なんかハチがヘタレでごめんなさい
リクエストが両想いってことだったのですが、なんだかそれっぽくならず・・・すみません
リクエストありがとうございました!

雪花様のみお持ち帰り可です

【title by】 確かに恋だった 様