もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

幸運+不運=幸せ


「伊作ーっ!」
「わっ!もう・・・危ないよ、雪斗」
「伊作なら受け止めてくれるって信じてるからさ」


名前を呼ばれて振り返れば、笑顔で飛びついてくる雪斗
可愛らしい僕の恋人の雪斗は、僕と正反対ですごく幸運
くじ引きは必ずいいものに当たるし、よくおまけとか食堂のおばちゃんから貰ってる
僕は雪斗と一緒にいるともらえるけどね


「それでももし近くに蛸壺があったらどうするの?怪我をするのは雪斗だよ。僕は慣れてるけど、雪斗に怪我はしてほしくないよ」
「伊作、大丈夫だよ。だって俺、伊作と一緒だったら絶対に落ちないから」


にっこりと笑う雪斗に、僕は可愛いと思うものの、渋い顔をした
だって、可愛い雪斗に怪我をさせたくないって言うのに・・・


「あのなー、伊作」


雪斗が僕をのぞき込んだ
急に近くに来た顔に、僕は驚いて転びそうになる
・・・転ぶ前に、雪斗が支えてくれたけど


「俺はいつだって伊作と居たいんだよ。優しさで幸運をあげちゃう伊作に、俺が幸運のおすそ分け。2人で居れば俺は幸せだから」
「雪斗・・・」


僕は笑う雪斗の頬に、ありがとうの意味も込めて口づけした


「雪斗、好きだよ」
「俺は伊作を愛してる」





―――――





「・・・いちゃつくのは良いけどな、場所を考えてくれ」


俺は呟いてため息をついた
2人が居るのは廊下の上
いくら人がそんなに多くないからと言って、当然のごとくいちゃつかれるのは目に毒だ
たとえそれが6はの名物だとしてもな


「・・・まぁ、幸せそうにしてるし、いいか」


俺は呟くと、柱にもたれて2人が気づくのを待った





幸運+不運=幸せ