もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

04.死んでから考えれば?





ずりずりとくっつくのは鉢屋三郎・・・ではなく、不破雷蔵
意外とそういう好意をするのは鉢屋だとおもわれがちだが、雷蔵だって普通にくっついてくる
そういう私は、くのたまのはずなのにその二人のせいでよく忍たま側に居るんだけど


「茜、僕はどうしたら迷わなくなるのかなぁ?」
「・・・そんなの、自分で考えたら」
「茜はいつもそればっかりだね」


ぎゅぅっと腰に腕を回したまま離れる気配すらまったく無い雷蔵
いつもの事なのでもういまさら気になどしないけれど、ちょっとだけ力がいたい
雷蔵はいつだって何か悩むと寝てしまう
そうじゃなければ、私を引っ張ってきてくっついて、今みたいに私に問いかける
その度に私は自分で考えろと突っぱねるのだ
たまに久々知や竹谷、尾浜にもっと優しくしてあげろといわれるけれど、私は雷蔵を甘やかす気はまったく無い
それに鉢屋だって私のことは何も言わないし


「考える事をやめたら成長なんてしないわ。迷うのは考えてるって事でしょう?だったら良いじゃない」
「でも、僕の迷い癖は三病だし・・・」
「じゃあ死ねば。死ねば考え抜いても誰にも迷惑かけないわよ。だって死んでるんだもの」

ぴしゃりと、言えば、雷蔵はそれはやだ、と私に回した腕の力を強めた
・・・だから痛いって・・・
まあ、伝わってないんだろうけど
私ははぁっとため息を一つついて、名前を呼んだ


「雷蔵」
「・・・?」
「あのさ、雷蔵は大事なことはスパッと決めるでしょ。だったらそれで良いんじゃない?雷蔵が悩むことなんていわゆる"どうでもいい"ことでしょ。迷って良いことなら迷えば良いじゃない。迷えるなんて今のうちなんだから」


ため息をついてそういえば、雷蔵はぱちくりと目を瞬かせて、ふわっと顔を崩して笑った


「・・・うん、そうだね、茜がそういうなら」
「雷蔵もいい加減その私が言うならってやめなさいよね、雷蔵のために言ってるわけじゃないんだから」
「なんだかんだ言って助けてくれる茜が好きだよ」


なんでもないことのようにさらりと好きと言葉にした雷蔵に、私は一瞬言葉を詰まらせる
けれどすぐにばかじゃないのっと少し声を荒げた


「別に私は雷蔵のこと、好きじゃないんだからね・・・っ」
「うん、知ってるよ」


みんなに見せるいつもの雷蔵で、なんでもないようにそう頷いた







死んでから考えれば?





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【title by】青い如雨露