もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

言葉だけはもっと後


「・・・雪斗?」
「み、きー・・・?」


がらがらとユリコかカノコか分からないけど引いてきた三木が声をかけてきた
俺はうっすらと目を開けて、三木を見上げた


「どうしたんだ、そんなところで」
「んー・・・ひるね」


俺が答えると、呆れたように風邪引くぞ、といわれた
三木は散歩?と聞けば、嬉々としてカノコについて話してくれた
・・・どうやら今日はカノコがお供らしい


「お散歩もいいけど・・・終ったら一緒に昼寝しよう?」
「・・・そんなに眠たいのか?」
「・・・ん」


いつもと様子が違うらしくて、変に三木に心配される
あぁ、別に変なところなんてないのにな


「・・・!雪斗、熱が・・・!」
「俺はいたって健康だ」
「そこだけきっぱり言うのはやめてくれ・・・とにかく医務室行くぞ!」
「医務室は、嫌だ」


沈黙が流れる
三木はため息をついて、俺の横に座ってくれた


「どうせ、"三木が居てくれたらなおる"とでも言うんだろ?」
「もちろん」
「・・・はぁ、仕方ないから今日は一緒に居てやる。その代わり!うつすなよ」


じとり、と睨まれて、俺はへらりと笑った
そして一言、それは保障できないナァ
言うが早いか、俺はごろりと三木の膝に頭を乗せた


「っ雪斗、調子にのるなっ」
「あー、うん・・・」


俺は三木の膝を借りてすぐに意識がなくなった





―――――




「・・・はぁ・・・」


膝の上ですぅすぅと寝息を立てるこの男
僕がいつも、こうして一緒に居るときに、どれくらいドキドキしてるのか気づいているはずなのに、気づかないふりをしたままべたべたとくっついてくるのだ


「・・・好きだなんていってやらないからな」


だから僕もあえて言ってやらない
それくらいの仕返し、しても構わないだろう?
僕は雪斗の頭を膝に乗せたまま、木に背を預けて、目を閉じた




言葉だけはもっと後