もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

言葉の返事は行為に乗せて


仙蔵×主



「ふ、あぁぅっ」


びくりと跳ねる身体に、くつりと笑う音がした
闇夜に活動をする忍者が飛び交うその時間に、私はその先輩のもとに居た


「は、ぁ・・・や、だぁ・・・!」
「堪えがないな、空峰」


響く水音に、私の顔がかっと赤く染まる
もちろんそれは羞恥であり、それ以外の感情はない
それなのに、身体は快楽に悦ぶばかりで、嫌がる思考とは身体は別なところにあった
嫌だと思っているのに、彼の指に翻弄されてあがる声は熱をはらみ
身体は火照り、どうすることもできない


「ひぅっ」


ぬるり、と耳の裏に舌を這わされ、ぞわりとしたものが背筋を通る
けれど下にある手は容赦なく私を快楽へと導くのだ


「やぁぁぁぁぁっ!」


私はいっそう強く叫んで、身体を震わせた
そしてくたりと力が抜ける
ずるりと引き抜かれる感触に、私は小さく声を漏らした
はらりと涙が落ちる

こんな事ってないよ・・・
ただ色の授業の一環として相手に選ばれただけだったのに


「そんなので、色が務まると思うのか?ぬるいな」
「た、ちばな、せん・・・ぱ、ぁっ!」


嫌だと首を振って否定して、それでも終らないこの地獄のような夜
どうして私がこんな目にあわないといけないのだろう
この美しい人に、私は何かしただろうか
考えてもまとまらない思考
本能が彼に身をゆだねろと囁く
それでも本能に身を任せないのは、きっとちっぽけな意地とプライドなんだろうなと、遠い思考で思った





―――――
side:仙蔵




くたりと横たわる四肢
いつもならば結い上げられた黒く長い髪を、布団に広げて、彼女は肩で息をしていた
まだぼんやりと意識があるのか、けれどその意識も遠いところにあるようだ


「な、んで・・・・」


ぽろりと涙をこぼす彼女は薄い月明かりに照らされて美しく
それを私がやったのだと思うとなおさら気分がよくなった
きっとこんな思考だからSだといわれ続けるのだろうな


「言ってやらないと気づかないほど、空峰は馬鹿なのか?」
「・・・言ってもらってからが、よかったです・・・立花先輩・・・」


まだ整わない呼吸
けれど普通の人ならば確実に意識を飛ばしていただろうその行為に、まだ喋る気力があるところはさすがだろうか
私はくつくつと笑うと、その肌に舌を這わせた
悲鳴を上げながらもそれは熱をはらみ、確実に先ほどとは違う反応に、私は笑った


「好きだ、茜」


返事は、聞かないままに、私はその唇を塞いだ







言葉の返事は行為に乗せて