もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

その証は服の下


side:兵助(主×兵助)



高い、女のような喘ぎ声
これが俺の口からでてるんだ、とふわふわとした思考の中で思った


「ぁ・・・ん・・・や、ぁ・・・雪斗、せ、ぱい」


なんだか俺一人しか居ないような感覚に陥って、雪斗先輩の名前を呼んだ
けれど、先輩は俺の呼び声に気づかない振りをして
俺は雪斗先輩が居るだろうそこに手を伸ばした
触れる体温に、少しだけ安堵する


「兵助は女のように鳴くな」


クツリと笑い、雪斗はそう言った
俺も自分でそうは思ったけれど、何だか指摘されるのは恥ずかしくて
ただ、口を開けば漏れる音は喘ぐ声だけ
それでも何とか反論しようと試みた


「お、れ・・・っふ、ぁ・・・お、なじゃ・・・あぁっ!」
「知ってるよ、可愛い兵助」


可愛い、なんて男に言う言葉じゃないのに
そう思ったけれど、なんだかそんなに嫌じゃなくて、どうしたんだろうと頭の片隅で思った
それは、すぐに訪れた快楽に飲み込まれたけれど


ずるりと後ろに回されていた雪斗先輩の手が抜かれて、俺はふるりと体を震わせた


「兵助、ごめんな」
「雪斗先輩・・・」
顔を見せて俺に謝った先輩は、どこか苦しそうで、俺は先輩の頭に手を回して軽く引き寄せた


「先輩、俺、雪斗先輩ならいいです」
「兵助・・・」


俺の台詞に、雪斗先輩は少し驚いた表情をして、けれどすぐに微妙な笑いを浮かべた


「勘違いさせるような台詞は、迂闊に「俺、雪斗先輩のこと好きです」・・・兵助、俺・・・」


言葉を遮るために口づけた雪斗先輩の唇は、すこしだけかさかさしていた
唇を離すと、雪斗先輩は暗闇で見えづらいものの、顔を赤くしているようだった
・・・これは脈ありって、思っていいんだろうか?


「・・・いつかつきあうだろう奴のために、接吻はしないでおこうと思ってたんだけどな・・・」


手加減出来ないぞ?と耳元で囁いた雪斗先輩に、俺は先輩になら壊されても良いです、と返した
そして降ってきた先輩の口づけに翻弄されながら、俺は雪斗先輩と一つになった








「で、空峰先輩と恋仲になったと」
「そうだよ」


羨ましいだろ?と言えばホントにね、と返ってきた答えに、俺は幸せそうな表情をしているんだろうと思った




その証は服の下