もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

閉幕


「・・・ど、して・・・」


震える腕
抱える血にぬれた躯
心の臓を突き抜けた刀は、刺さったまま


「なんで、どうして死んじゃったの・・・、ねぇ、茜・・・・!」


その日、くのたまの一人が死んだ




―――――





その知らせは、忍術学園の教師達に衝撃をもたらした
卵として、守られていたはずの生徒が、殺されたのだから


「どういうことなのでしょう、説明をしていただけますね?」
「弁解はできぬ・・・誠に申し訳なかった」


空峰 茜の親であるその女性は、厳しい顔つきだった
懐から出した手紙
それは一見何の変哲もない家族への手紙だった
不自然な、墨がなければ


「この手紙に、学園がおかしい、とそうかかれていました。信じられるのが己一人であり、私ができる術は学園に警告を出すことだと」
「・・・彼女の死は、警告であったと?」

ぴりりとした空気が庵に流れる
そのとき、たらりと天井から液体が垂れてきた
落ちた先は、畳の上
その液体は赤く、鉄のにおいがした


「それこそ、間者を天女だとはやし立てるほどに、堕ちてしまわれた様で・・・」
「生徒に気づかされるとは、学園も平和ボケしたものですな」


すたりと天井から女の首を引き摺り下ろしてきた男性
彼もまた、茜の家族だった


「この首は差し上げます」
「私達の大切な子が死を持って気づかせた本来の目的、ゆめゆめ忘れえぬよう・・・」


そういって、二人は庵を出て行った





―――――




「・・・あ、れ・・・?」


ぺらり、と茜のつけていた日記を見返して、ある日付で違和感を覚えた
茜の死ぬ2日前の日記、いつもと違う・・・
・・・そういえば、この前引き出しの奥にからくりを作ったって・・・


かた、かたり、かちゃん


少し複雑なそのからくりを開けば、中からしっかりと閉じられた紙切れ
明けてみれば、それは桔梗さんが行った諜報活動の様子


「伝えなきゃ・・・」


茜はきっとこの事を伝えたかったんだろうから








そうして、彼女の働きにより、学園は大事になることなく、危機を乗り越えた
けれどそれは多くの人に、衝撃をもたらす結果として・・・




閉 幕
(嘆いた人は、だぁれ?)