もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ
引き取られる

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デフォルトはステーシー(G・モーガン / ※GはゴドリックのG)
緩く編んだ長い銀髪と眼鏡の奥で眠たそうに、とろりと開かれた青紫の瞳。容姿はスリザリンっぽい。
そんな見た目に反して、とてもよく食べる。魔力を使いまくるとお腹が減るようです。
――――――――――


1985年、イギリス、ロンドン。
「ステーシー、ちょっといらっしゃい」
「はいよ、マザー」
ここ、モーガン孤児院に在籍する子供の一人であるステーシーは、5歳にしては驚くほど流暢に話す子供だった。
そんなステーシーがつれてこられたのは、孤児院に一つしかない応接室。
掃除でもするのかと思って中に入れば、そこにはひとりの男性がいる。
「マザー?」
言外に、誰だと尋ねた。
「あなたを引き取りたいって方よ。ごあいさつなさい」
ステーシーは男性に向き直り、スカートの裾をつまんでお辞儀をした。
「初めまして、ステーシーです」
すると、男性も立ち上がってお辞儀をした。
「バトラーと申します」
引き取る側にしてはやけに丁寧だなぁと不思議には思ったが、ものの30分もしないうちにバトラーがステーシーを引き取ることが決まった。
「ステーシー、元気でね……っ!」
「マザー」
目に涙をためて、それでも幸せになってほしいと笑顔で送り出してくれるマザーを慰め、懐いてくれていた子供たちを慰め、ステーシーはバトラーに連れられて孤児院を後にした。
この孤児院は引き取る相手の身元確認には定評があるので、これからの生活に不安は特にない。
が、驚くことがあった。
「……あれ?」
孤児院を出て車の後ろの座席に座り、1分もしないうちに鬱蒼とした森の中を走っていたのである。
「あの、バトラーさん?」
すると、前で運転していたバトラーはくるりと振り向いた。
「お嬢様、私のことはバトラーとお呼びください」
あまりにも真剣な目に、ステーシーは怖くなった。
「わ、わかりましたから、前を見て運転してください!」
「私が運転をしなくても平気でございます。すでに自動運転になっておりますので」
「そんな高性能な車、まだ開発されてないと思うんですけど……」
バトラーは、嬉しげに笑った。
「さすがお嬢様、よくご存知でいらっしゃる」
「や、魔法でも使わないとありえないですからね?」
バトラーの笑みは、さらに深くなる。
「左様、魔法を使っているのでございます」
「へぇ……って……魔法?」
「はい、お嬢様は、魔法界でも古くから続く名家、グリフィンドール家の当主でございます」
まほうかい
めいか
ぐりふぃんどーる
とうしゅ
ステーシーの脳内を、まだ『ステーシー・モーガン』となる前の記憶が駆け巡った。
魔法といい、グリフィンドールといい。
(ハリポタかよ!!)
ステーシー・モーガン、5歳。
彼女は、前世の記憶を持って転生した少女だった。



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