もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ
始まりの日



――桜が満開に咲き誇り、青空の広がるこの良き日に・・・――
新入生代表の言葉が、しんと静まり返った大講堂に広がる
新入生達の誰もがこれから始まる新しい生活に期待で胸膨らませるだろう、入学式

けれど、この黒鷺学園中等学校においてそれは進級とあまり変わらなかった
なぜならば、黒鷺学園は幼等学校から大学まで、一貫して教育を受けることの出来る学校であるからだ
そしてこの黒鷺学園は、お金持ちの御曹司を集め、未来の社会の担い手を立派に成長させるため、高水準の教育を行う、いわゆるお金持ち学校
また思春期にどこぞの馬の骨とスキャンダルを起こさせるわけにいかないと、男女の校舎は別々であった
国内にいくつかあるこのような学園は、同じような弊害を抱えていた
それが、思春期特有の性の問題だ
性に関心のある子どもは、その有り余る精力を発散させる場所がなく、内に溜めるしかない
それをどこで外に出せば良いのか?
そして生まれたのが学園内の常識・・・同性愛

この学園はそんな場所だった

「―――新入生代表、神薙紅葉」

彼が、変えるまでは


彼らの軌跡




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