4 説明を聞き終えた紅葉は、出してもらったケーキを食べ終わると、ソファから立ち上がった それにあわせて、和彦も立ち上がる 「寮の場所は分かるか?」 「地図がありますから、大丈夫です」 「そうか。これ、俺と信和、利親の連絡先だ。何かあればどれかに連絡入れろよ」 紅葉に差し出された紙には三人分の連絡先が書かれていた それを受け取った紅葉は、携帯を取り出して早速登録する 保存しました、というメッセージを確認してから携帯を少し操作して3人分のメールアドレスにメールを一斉送信する すぐに居た和彦と利親の携帯が鳴る 「私の電話番号を入れて送りました」 「おう、登録しておく」 「ありがとうございます、神薙くん」 こんこんとノック音が聞こえ、和彦が入れ、と呼びかけると姿を現したのはもう一人の秘書である八神信和だった 「ご無沙汰しております、紅葉様。また時間のあるときにご挨拶に伺ってよろしいでしょうか?」 「学校内での私は生徒です、余計な気遣いは必要ありませんよ、信和さん」 「失礼しました・・・和彦様、そろそろ」 「もう時間か・・・すまないな、紅葉。これから少し神威に顔を出さなきゃならん」 正月をサボったからだろうな、と面倒くさそうにため息をついた和彦に、信和が当主様が怒られても仕方がありません、とぴしゃりと返す 紅葉はそんな二人を見送ると、自身も寮へと向かうため利親にお礼を言って理事長室を後にした ―――――――――― side Kazuhiko 学園の変革のためとは言え、紅葉を呼んでしまった 正直、呼びたくなど無かったのだ、こんな学園 「紅葉様を呼んで、大丈夫だったのか?」 「良くねえだろうな、後で神薙から文句が来るだろうよ。・・・ただ、ココを守るためには、紅葉に頼むのが、一番近道なんだ」 世間から見て逸脱した常識 郷に入りては郷に従えとは言えど、その郷は紛れも無く異常だ 紅葉は本来キレイな顔立ちをしている、キャーキャーとうるさいガキ共にも気に入られやすいだろう 本家で会うときはコンタクトかシルバーフレームの眼鏡だったが、今日は黒縁だった あれのおかげなのか、いつもよりも大幅に紅葉の魅力は隠れていた 外さなければ、まあまあ顔の整った平凡な容姿の生徒としてこの学校で生きていけるだろう 「っはー・・・本家行きたくねぇな・・・」 「それは正月に戻らなかった和彦の自業自得だろう」 「てっめー・・・あん時はしかたねーだろうが。お前も分かってんだろ」 「和彦が仕事を溜めなければ帰れたぞ?俺の仕事は終わっていたからな」 「ぐっ・・・」 確かに、生徒が起こしやがった問題は12月の始めで、きちんと処理していれば年末は本家に帰ることが出来だろう 副理事が煩くて煩くて仕方が無かったため仕事に手をつけるのが面倒で放置していたのが理由であるから、自業自得といえば確かにそうなのだ ホントあの副理事やめさせてやりてぇ 「・・・さっさと終わらせて、かえって来るぞ、信和」 「承知しました、和彦様」 丁度来たエレベーターが、ぽーんと軽い音を立てた 執筆 2011/09/21 [←] | [→] |