小さな小さな違和感 綾部くんと別れて、鈴音さんを引き止める1年生を宥めてから、私は鈴音さんを連れて食堂に来ていた たすきをかけて、楽しそうにおばちゃんに話しかける鈴音さんに、意外と料理は好きなのかもしれないと思いつつ、鍋をかき回していれば、茅野に矢羽音を飛ばされた 『なんでわざわざ食堂つれてきたの?ほのかバカ?』 『変に野放しにするよりもそばで見てたほうが楽だからつれて来ただけだよ。何かあれば茅野も言ってくれるでしょ?』 『・・・アンタって子は・・・分かったわ、手伝ってあげるわよ』 仕方ない子ねーという様に、笑みを浮かべた茅野に、矢羽音でありがとうと返してから、私は小皿に盛った味噌汁を味見した おばちゃんに先に食べても良いと言われて、鈴音さんと一緒に取る夕食 そこに少し違和感を抱く なにが、といわれたら、説明できないのだけれど いわゆる"野生の勘"というものなのかもしれない そんなことを考えながら、会話はきちんとこなしていて 染み付いた癖って怖いなと思いながら食事をする 途中で鐘の音がして、ヘムヘムが夕食時を知らせた 「皆から注文をとればいいの?」 「はい、それを私とおばちゃんに伝えてください」 「うん、分かった」 へにゃり、という言葉は似合いそうな笑顔を浮かべて頷いた鈴音さん 微笑みを浮かべてお願いします、と言ってから、私は厨房に引っ込み、茅野と交代する そのときに、矢羽音を飛ばす 『鈴音さん、なんか違和感がある』 『・・・ちなみにどんなところが?』 『分からないけど・・・ふとしたときに、何かが違うって思うの』 茅野は自分の分の夕食を持つと、私も気をつけてみておくわ、と言い残して厨房を出て行った 続々と集まってきた生徒達に比例するように、鈴音さんから注文の声が飛ぶ回数も増える 私は鈴音さんに気をつけながら、自分の仕事をこなした ――――― side:茅野 食事を取りながら、生徒達から注文を受ける鈴音さんを横目に見る ほのかに言われたように、どこか違和感のある 例えるならば、あわないものを無理やりあわせているような けれど、言われなければ気にしないような、ほんの小さな綻びともいえるようなそれ 気がついたほのかには、さすがとしか言い様がない 「茅野先輩!」 「あら、ユキちゃん、トモミちゃん。これから夕食?」 「はいっ、今日はサバの味噌煮なんですね」 「生きの良いサバが手にはいったのよ」 おいしそうー、と声を漏らす二人に、早く注文に行っていらっしゃいなと送り出す けれど二人は注文口に立っている鈴音さんを見て少しだけ表情を顰めた 私はそれに疑問を抱いた 彼女は、一応害はないはず、くのたまにも特に手は出していない それなのに、何故・・・ 「先輩、あの人・・・前に私たちのほうまで来てたことあるんです」 「そのときはほのか先輩居なくて・・・」 「くのたまの敷地には入れないようにするために、わざわざほのか先輩が忍たまのほうに行ったんですよね?だったらおかしいです・・・」 小さな声でそう私に言った二人 くのたまのほうまで来ていた?でも、私はそんなことほのかから聞いていない どういうことなのだろう 小さな埃に、私は眉をひそめた 小さな小さな違和感 → 戻 |