無意識の しばらく鈴音さんをぼうっと見ながら、日の光りにあたる 太陽が傾き始めて、そろそろ夕食の手伝いの時間だと気がついた 確か今日は私と友人の日だ くのたまの3年生までは、行儀見習いも多いからと食事の準備当番も少し多く入るのだけれど、既にくの一として生きることを選んだ4年生以上は、必要以上に行儀作法を学ぶ必要はない だからか、食事当番も少なくなってくるのだ まあ、その少ない日が今日なのだけれど それにしても、それをするとなると、監視の忍務が疎かになってしまう 眉間にしわが寄ったのが分かった 「ほのか先輩、なにしてるんですか?」 「・・・綾部くん?」 「はい」 土のついた制服を着て、踏み鍬と手鍬を持った綾部くんがいつもの無表情で立っていた 私は制服についた土を払ってやりながら、少し考え事を、と返しておいた それに首をかしげる事で疑問の意を示した綾部くん あまり突っ込んで欲しくはないのだけれど、綾部くんはそれだとあまり納得しないのだろう 「鈴音さんを、調理の場に立たせていいのかな、って」 「普通に考えたら、ダメだと思います。・・・でも、それが先輩の忍務なら、仕方ないんじゃないですか?」 「・・・綾部くん・・・」 気がついていたのか 5年以上は、あまり気にせず、むしろ養護するような雰囲気さえ伺える 私としては、何故最高学年とその下があそこまで無防備になれるのか不思議で仕方ないというのに 忍たまは、どこまで堕ちるというのだ そう思うと背筋が寒くなった 「・・・まあ、そうだね」 「先輩も、それで死ねるなら本望じゃないですか?」 「どこまで私の事知ってるのかな綾部くんって・・・。たまに疑問に思うよ」 「ほのか先輩との付き合いも長いですから」 忍術学園に入って一年経ってから、"死ねない"ことにイラついていたときに会って、それからずっと会う機会があれば話す仲ではある そうすると、4年にもなるのかと考えて、確かに長いと綾部くんの言葉に心中で同意する 「・・・私は忍務を遂行するだけだよ」 私は綾部くんから視線を外して、そう答えた それじゃ、と軽く手を上げて綾部くんと別れて、1年生と遊ぶ鈴音さんの元へ歩いていった ――――― side:喜八郎 「相変わらずな先輩」 去っていった後姿を見ながら、そう零した ほのか先輩は死にたがり でも自分じゃ死ねないただの臆病者 先輩は自分を臆病者といって憚らない けれど、それはある意味では優しさ 己の力で叶わぬものに殺されたい、その思いの動機が例え身勝手なものであっても、きっと自分が死ねる環境にさえいることができれば、どんな主人にだって頭を垂れるんだろう 「先輩も救われればいいのに」 無意識に優しい先輩に、それは似合わない 自分を認めればいいのに 無意識の → 戻 |