もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ
道中の視線






事務室に向かえば既に通達してあったのか、貸出票には記入がなされていた
私は吉野先生に布団のある場所を聞いて、そちらに向かう
その途中で、用具委員の先輩を見かけた
・・・寝具一式というのは、用具委員会の管轄なのだろうか?
そう思うも、修理用具を持ってどこかに言ってしまったので、何かいうことは叶わず、私はまあ、いいかな、と呟いた

指定された場所について、寝具一式を持つと、来た道ではなく長屋にいける道を歩く
学園内の敷地は5年間通っているだけあって知っているし、そもそも不祥の事態があったときに、学園を知らぬでは守れない
私たちは学園に入ってからずっとその頭に、身に叩き込んでいくのだ
この場所を守るための知識と力を
そして、自らが戦乱の世で生き、死んでゆくための知識と力を

ふいに、視線を前から逸らした
誰か、居る
けれど、その視線は敵意ではなく、観察
そこからして、きっと学園内の忍たまだろう
どうやら鈴音さんは忍たまに好かれているようだから
私は視線を前に戻して、自分に宛がわれた部屋に戻った



―――――
side:小平太



「なあ、長次、今の子、わたしたちの方見てた?」
「・・・あぁ」
「あれって、きっと気がついてるんだろうなぁ。強いのかな?わたし凄く気になる」
「・・・鈴音さんが怖がるから、やめておいたほうがいい」


わたしがこの忍たまの長屋には珍しい桃色の制服を見つけて、わたし達の気配に気がついた事に気がついて、わたしはわくわくと気分が高揚するのが分かった
だって、わたしは"暴君"だから
ぺろりと乾いた唇をなめて、くのたまの子の強さに思いを馳せる
鈴音さん、何てわたしはべつにどうでもいい
だって彼女はただの無力な人だから
わたしは強い人に興味があるんだ
・・・長次がダメって言ったから今はやらないけど


「早くあの子と手合わせできないかなー」


来るとも断言できぬ日に、わたしはそれでも気持ちが高揚する
わたしの勘が叫ぶんだ、あの子と手合わせできる日が来るって
わたしの勘はめったに外れたことないからな!きっと大丈夫だっ


「小平太、いくぞ」
「わかったっ、次って裏山?」
「あぁ・・・」
「よーし、走りたい気分になってきたから先行ってる!いっけいけどんどーんっ!」


長次に促されて、わたしは高揚する気分をそのままに走り出した



―――――
side:ほのか



寝具を持って部屋にたどり着けば、意図して音を出して歩いたのが功を奏したのか、不破くんが戸をあけてくれた
私はありがとう、と言って部屋に寝具を置く
一組だけの寝具に、不破くんが首をかしげた


「どうして一組なの?」
「自分のものがあるのに、新しく持ってくることありませんから。私のは後ほど部屋から取って来ますよ」


だから気にしないでください、といえば、不破くんはそう・・・?と少しだけふに落ちない顔で納得してくれた
私ははい、と言ってから不破くんは腰を上げる


「行っちゃうの?雷蔵くん・・・」「僕も明日の授業で調べないといけない事があって・・・ごめんなさい、鈴音さん」


少し残念そうに不破くんを見上げる鈴音さんに、不破くんは困った笑みを浮かべて、ごめんね鈴音さん、ともう一度謝ると部屋を出て行った



道中の視線






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