恐怖の行く先は 不破くんを客間に案内した後 私は不破くんを起こさないように昼間来た川と程近い高台に来ていた 遠くに見える街はぽつりぽつりと明かりが見えるものの、既に寝ている人が多い様で、全体的に暗い 「・・・お父さん、お母さん・・・元気かな・・・」 きっと彼らは私を自分の子だとは思っていない そんなのは分かっている でも、私にとっての親は彼らしかいないのだ きっと、そう思われるのは迷惑だと思うけれど・・・ 「・・・?」 そんなとき、見下げて居た街に、ふと違和感を感じる 遠くから近づいてくるぽつりぼつりとした明かり その明かりは、街に入る手前ですべて消え去る 気づいた時には、考えるよりも先に、体が動いていた 木を伝い、崖を降り、飛び降りた衝撃と音を殺し、街へ急ぐ 同じだったのだ、"あの時"と 今ならば、街の人々に気づかれることなく殺せるはず だって私は、闇に紛れる術を、力の使い方を、人の殺し方を学んだくのたまなのだから 一人一人、確実に 悲鳴を上げさせないように、気づかれないように、けれど迅速に 命を刈り取る度に染まる両手 クナイが血で滑らないように気をつけながら、全てを終えた時には既に月が一刻分は傾いていた 血溜まりで辺りは鉄の臭いが立ちこめる ・・・このままじゃ、血の臭いに釣られた野生の動物が集まってしまうかもしれない そう思った私は、死体を抱えて順番に街から出していく 街からすべて死体をだし、それを村とは違う、人気のない山に捨て終わった頃には、後半刻もすれば日が顔を出すような、そんな時刻になっていた 「・・・帰らなきゃ」 ぽつり、と一つ呟いた だって、もう帰らないと、会ってしまうから 私を鬼だと、そう言った人たちに 逃げるように、私は街を駆け抜ける 後には血と鉄の臭いが残るだけだった ――――― non side ― 鬼が出た ― ― 鬼が出たよ、この街に ― ― きっとあの鬼だ、人の皮を被った鬼 ― ざわり、と街を騒がす赤黒いその跡 遠くない昔に居た街の鬼の噂 そして、森の奥にあるという鬼の里の噂 ― 殺さなくちゃ ― ― 二度とこの街を血で染めないために ― ― 鬼を退治しなくちゃ ― ― 里があるならばそれも全て退治しないと、街に平和は訪れない ― 繰り返す、繰り返す それは、誰の悪戯 恐怖の行く先は → 戻 |