いつもと違う、 釣った物を村に持ち帰り、皆に平等にいきわたるように分ける 村では助け合う事が普通で、それは長く帰ってくることのない私でも同じ ここのところご無沙汰久しぶりに食べるという新鮮な魚に、皆喜んでくれた 釣って来てくれたから、と二尾譲ってくれた魚と、その他貯蔵庫からとってきた食料を持ち家に帰る 気配に気がついたのか、不破くんがこちらをむいて、おかえり、と言った ただいま、と返しながら、私は台所に向かう おかえり、と迎えられるなんでもない事が、自分の家だというだけで、なんだかくすぐったく感じた 「わ、森の中なのに魚なんてあるんだ・・・岩魚?」 「もっと森の奥に川があるのだけれど、そこで釣れるの」 後ろからひょいと手元を覗き込んだ不破くんにそう返しながら、魚の内臓を処理する 三枚におろすことなく、とりあえず内臓だけ取り除き、顔だけ後ろに向ける 前ぶりなく振り返った私が見たのは、ぱちぱちと瞬きしながら不思議そうにする不破くん そんな不破くんに私は塩焼きとから揚げ、どちらが良いかを聞こうとして、はた、と考え直す ・・・不破くんの迷い癖は、学園でも有名なのに、決定権を任せて大丈夫なのか、と そこで不意に気がついた 私と居るときは、余り悩んでいた様子がなかったことを 「塩焼きとから揚げ、どちらが良いかって聞こうと思ったのだけど・・・せっかくだからどっちも作るよ」 「あ、うん。そうだね、僕が決めて良いってなると、きっと日が暮れちゃうし・・・」 「そういえば・・・最近、迷ってるところ見ないね」 「え?あ、そういえば・・・なんでだろう?」 振り返ったついでとばかりに聞いてみれば、不破くん自身も不思議そうに首をかしげた どうやら自分でも分かっていないらしい ・・・まあ、迷わないことはいいことだし、特に気にする必要もないかと思い直し、私は再び手元に視線を戻した ――――― side:雷蔵 トントントン、と乱れない包丁の音に、慣れてるな、と思いながら後姿を見る 食料を取りに行った一縷さんに特に変わった様子はなくて、いつも通りだ 一時期死にたいっていってたのも、最近聞いていない ・・・学園の死にたがりって言ったら一縷さんだったし それを言ったら僕も迷い癖で知られてるけど・・・ 先ほどの一縷さんの言葉を思い出す 確かに、一縷さんと会ってから、余り迷っていない気がする あ、もちろん食堂のご飯をなににするか、見たいな些細なことは迷ったりすることもあるけれど・・・ この村まで追いかけてくるときだって、迷う前に行かなくちゃって思ったし ・・・なにが違うんだろう?僕はいつも通りのはずなのに・・・三郎に聞いたら分かるのかなぁ・・・ いつもなんだかんだと僕に答えてくれる双忍の片割れを思い浮かべて、僕は小さくため息をついた いつもと違う、 → 戻 |