想うだけならば自由だから 村の貯蔵庫に着いた私が中を覗くと、そこには畑で取れた野菜や米が収納されており、今年も豊作だった事が伺えた ただ、どうしても森の奥であるという土地柄、海産物は長期保存が出来る干物などしか蓄えては置けない その調達も岩美の町に旅人に扮して買い物に出る時に買ってこれるくらいだ 卵を得るために鶏などは飼育しているが・・・それを食用にすることはなかなかない そのため、どうしても森の奥で調達することになる 「こんにちは、与太吾さん、最近川まで行った?」 「お、久しぶりだなぁ、ほのか嬢ちゃん。最近はいってねぇなぁ・・・。なんだ、久しぶりに嬢ちゃんが行ってくれるのかい?」 「うん、でもそこまで期待しないでね」 「謙遜すんなって、ほのか嬢ちゃんは獲ってくるのがうまいからな。ありがとうなぁ」 貯蔵庫には、街で買った海産物の他に、自分達で取った魚を干物にしたものなんかが保存されていることもある けれど、いつも置いてある場所に、魚らしき姿はなかった どうやら最近は行かなかったようで、せっかくだから、と貯蔵庫の管理をしている与太吾さんに提案する それに嬉しそうに笑った与太吾さんに私も笑みを浮かべ、貯蔵庫においてある道具を持つと、森の奥へと入っていった 村からは大分離れた、街に近い場所には川がある 町の人間は商人経由で運ばれてきた売り物を買う事が殆どで、この場所を利用することは少ないために、私でも来れるのだけれど 私は早速えさをつけた釣り糸を垂らすと、魚を釣り上げた 久しぶりで感覚が鈍ったかもしれないと思っていたけれど、それほど衰えていないようで、二刻も吊り上げていればそこそこの量になった えらに縄を通して縛り、一つにすると、それを担ぐ 木を登れば、遠くに見える岩美の街 ふと、血の繋がった家族だった人たちを思い出す ・・・あの人たちは元気だろうか?妹と弟を、両親は私に近づけさせることはなかったし、私も壊してしまいそうで怖かったから、近づくことはしなかったけれど 元気ならば、それでいい・・・生きて元気でいるのならば、私が守った事は意味があったのだと、そう思えるから 「・・・そのうち、こっそり見に行ってみようかな」 元気な姿が、少しだけでも見れたらいい 幸い、今の私には沢山の時間があるのだから 与えられた意図しない休暇中に、したいことを見つけた私は小さく笑みを浮かべて、街に背を向け、再び村へと戻っていった 想うだけならば自由だから → 戻 |