初対面 唐突に呼ばれた学園長の庵 友人には何かしたの?といわれたけれど、何もしていない 相変わらず忍務はこなしているし、授業態度だって別に悪くはないはずだ 私はわけも分からず、言われたとおり、学園長の庵を訪ねた しかし、辿りついた庵の中にある気配に、私は眉をひそめる こんな気配、今まであっただろうか そう思いながらも、声をかけないわけには行かないkら、と中に声をかけた 「失礼します、一縷ほのかです」 「おぉ、来たか一縷。入りなさい」 「失礼します」 障子を開ければ、そこには学園長と共に女性の姿 それを不審に思いながらも、私は学園長の前に座る ごほん、と一つ咳払いをしてから、学園長は隣の女性を紹介し始めた 「この人は鈴音(すずね)さんと言って、記憶喪失でのぉ、帰る家どころかどこから来たのかも分からぬらしい。分かるまで、ということじゃが、学園で預かることになったので、一縷に世話を頼みたいのじゃ」 「私が・・・ですか?」 「くのたまの中でもお主は突出して成績が良いと言うし、それに加え性格も良いとシナ先生のお墨付きでの」 頼まれてはくれぬか?といわれ、私は断ることも出来ず是と返した 学園長は、空き部屋の関係で忍たま長屋しか住まわせる事が出来ず、その関係で私にも忍たま長屋に移って欲しいのだと言った 別にくのたまの皆には授業などで会えるのだし、寝る場所が変わったところで生活が変わるわけでもない、と私はそれに頷いたのだった 長屋は五年生の場所を借り、その場所を案内させるからと呼び出されていた忍たまの名前は不破雷蔵と言うらしい 私の後からやってきた彼は、鈴音さんとやらが居ることに驚きもせず、むしろ私が忍たま長屋に移ることに驚きの表情を浮かべていた 「先ほど紹介がありましたが、一縷ほのかです。同じ五年生ですから、敬語はなくてかまいません」 「あ、うん。僕は不破雷蔵、よろしくね、一縷さん」 手を差し出せば、おどおどとしながら握り返してくれた彼に対して、私は良い印象を持った 私自身は忍たまと関わりを持っていなかったため全然知らなかったのだけれど、友人曰く、忍たまは正直関わりたくないわ!とのことだったので、もっとくのたまに対して風当たりが強いかと思っていたのだ 「・・・一縷さんって、もっときついのかなって思ってたよ」 「私は忍たまのほうとはまったく関わってませんでしたから・・・それかと」 私をまったく知らなかったのは、向こうも同じだったらしい 苦笑しながら私のイメージを不破くんが言った言葉に伺える お互い様、ということだ 「あ、じゃあ案内するね、一縷さんも鈴音さんも付いてきて」 「ありがとう、よろしくお願いします」 「ありがとうございます、不破くん」 笑って言えば、どういたしまして、と帰ってくる返事 鈴音さんもぺこりとお辞儀をして付いていく 私はお世辞にも身長が高いとはいえないから、不破くんの後ろに身長の高くない私と鈴音さんが付いていくのは、なんだかカルガモの親子のようだ そんなバカなことを考えながら歩いていれば、前から歩いてくる同じ顔 比喩などではなく、本当に同じ顔なのだ あれがかの有名な変装の名人か にやり、と笑ったように見えた顔に、私はちょっといやな予感がした 初対面 → 戻 |