拒絶された場所 忍務を告げられた翌々日 私と不和くんは学園から離れ、岩美へと続く街道を歩いていた 歩けば歩くほど、見覚えのある懐かしい景色に、苦い思いが溢れてくる そろそろ街が見えてくるくらいの場所まで来たとき、私は唐突に足を止めた つられるように、何歩か前で不破くんも足を止める 「どうしたの?」 「・・・街の中に、私は入れないから」 心配そうに声をかけてきた不破くんに、私は呟くように、けれど確実に聞こえる声でそう答えた 私の答え方に、不破くんは困惑した表情を浮かべる 彼が私の事情を知らないだろう事は分かっている けれど、これは私個人の問題であり、彼を巻き込むことは出来ない 私と一緒に街に入れば、彼自身にどんな感情を向けられるのか、分かったものではないから 「何か事情があるってことだよね」 「私の故郷は岩美なの。・・・でも、私はあの場所から追い出されるように・・・ううん、追い出されて学園に入学した。帰ってくることは許さないとそう言われたから・・・私と一緒に不破くんが街に入ったら、不破くん自身を見ることなく敵だと決め付けられてしまうと思う」 「そんな・・・っ、それで一縷さんは良いの?」 「それだけの事をしたの。・・・だから、仕方ないんだよ」 わざわざ怒ってくれる不破くん 彼はとても優しい性格で、きっとそんなことを言ったら心配してくれるに決まっているのに ・・・わざわざ言ったのは、同情を引きたかったからなんだろうか 自業自得なのに、どれだけ私は未練がましいのか 私は場の雰囲気を逸らすように、とにかく、と言葉を発した 「私は岩美の街へは行けない。"これ"が私を学園から離すために渡されたものなら、岩美に行く必要は無いはずだから」 「そ、そうだけど・・・」 「付き合ってくれてありがとう、私は適当に時間を潰すから、不破くんは学園に戻ってくれてもいいよ」 私はそういって道の横に逸れ、森の中へ入っていった ――――― side:雷蔵 森の中に入っていった一縷さんに、僕はどうして良いか分からずに、けれどこのまま一人で行かせてしまうのはだめだと思った 一縷さんが岩美に行けない詳しい理由は分からない でも、それを僕に説明してくれたときの顔は、諦めたような、けれど寂しいような、そんな複雑な表情をしていた気がする 普通じゃ分からない表情の変化だったかもしれない でも、僕は確かにそうだと思ったんだ だからこそ、このままじゃいけないと思う それがおせっかいだと思われても、動かないよりも動いた方がきっと良いと思うから 僕は迷うことなく、一縷さんの後を追って森に入っていった 拒絶された場所 → 戻 |