鬼の子と男の子 新しい子どもが来たのだ、と そう誰かが言うのを聞いた また私を鬼という子どもが増えるのか、とため息をつく 家に居ても両親は私を恐れるし、だからと言って家から出たところで、近所の人々に恐れられた私に、家の近くで落ち着ける場所なんて無かった とりあえずその子に会わないように、早々に森にでも行こうとして家を出れば、見たことのないふわふわで茶色い髪の子どもと、近所の子どもが話しているのが見えた 茶色い髪の子の向こうで、私を指差す近所の子どもに、もう話したんだ、心のうちで呟いた どうせ次あったとき、あの子どもも私を鬼の子だと言うんだろう 連鎖は止まらない、分かってるはずなのに、いつまでも信じようとする私はただの馬鹿なんだろうか 私は彼らから視線を外すと、いつも居る森に向かって歩き出した いつも通り、森の開けた場所について、私はごろりと草の上に寝転がった 開けたその場所は、空を切り取るかのように丁度そこだけ空が見える ぼんやりと空を見上げながら、私は一日を過ごすのだ たまに森の動物達が擦り寄ってくるから、その子たちと遊んで 人よりも希薄な気配を持つ動物たちに気づくために、意図せずに鋭くなった気配の察知能力は、嫌でも私に色々な情報を与える がさりと鳴った草に、私は起き上がる 嫌な気配じゃない、けれど良く知らない気配で、私は首を傾げる 動物ならこんなにがさがさ鳴らないし、だからと言ってこんなところに来る人間は居ないハズなのに・・・ 疑問に思いながら、音のするほうをじっと見つめていると、程なくして顔を出したのはふわふわの茶色い髪を持つ、外から来た新しい子 「え・・・」 「あ、みつけた!」 私を見てぱっと顔を輝かせた彼は、勢いがつき過ぎたのか、気の根っこに足を引っ掛け、ふわふわの髪に草や葉っぱを沢山つけて私の前に転がってきた 幸いにして転んだ先はやわらかい草の沢山生えた場所だったから怪我は無い 「・・・だれ?」 「ぼくはふわらいぞう!きみのことが気になったから・・・」 きちゃった、と笑う姿に、私はぽかんとする きちゃった、で分かるような場所だっただろうか、と思いながらも、私は顔だけ向けていたのを居住まいを直して正面から彼に向く そうして、私はこてりと首をかしげて彼に聞いた 「どうして?」 「だって、おにの子っていわれてたけど、ぼくにはぜんぜんそう見えなかったから」 私は目を見開いて驚く 初めてだった、そんなことを言われたのは 皆私の力を見て、鬼が取り付いたんだ、むしろ私は鬼の子どもなのだと怖がり、罵るだけだったから にこにこと笑いながら、名前を教えて、と言う彼は、私を初めて私だと見てくれた人だったのだ 鬼の子と男の子 → 戻 |