もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ
がらりと変わる日常






そんなあやふやのまま終わった演習に、もちろん私は事情を聞かれて
先生方にはきちんと報告書も提出したし、最初から監視であると分かっていたから特に何も言われなかった
が、生徒はそうでもないようで
あの場所に居合わせた七松先輩と不破くん、茅野以外は納得などしなかった
特に彼女に対して少なからず好意を抱いていた人は大勢いた

だから、そんな状態のこの学園に流れた真実は、簡単に私へと感情をぶつけるきっかけになった

歩けば殺されそうになる
例外はあれど、食事当番が忍たまならばその食事には致死量の毒


「ほんっと、何で死なないのか不思議なくらいよね?」
「・・・言葉だけ見てると私の死を望んでみるみたいだよ、茅野」
「あら、私のこの笑みを見てそれを言ってるのなら、ほのかの目は相当節穴ねー」


くつくつと楽しそうに笑いながら、茅野はそういう
性格悪いよ、と言いながらも、死ねそうな今の状況に思わずワクワクしてしまう私も不謹慎なんだろう


「ねえ、いつ殺してくれると思う?」
「・・・最近そればっかりねー。まあ、死にたがりのほのからしいけど」


ふう、とわざとらしく茅野がため息をついた
まあ、仲間のくくりに入る人から殺されるのはあまり気持ちのいいものではないけれど、彼らにとって私は敵ではあるのだ
今もほら、どこからともなく殺気が飛んでくる
そんな今の状況が楽しくて仕方なかった
けれど心のどこかで理性がおかしいと叫んでいた



―――――
side:雷蔵


最近、学園がぴりぴりしてる
その原因は、鈴音さんが居なくなったことなのは僕も分かるけど、それだけじゃなくて
鈴音さんはシャグマアミガサタケのスパイだった
監視し、問題があった場合は速やかに芽を摘むこととされていた一縷さんのとった行動は正しい
それなのに納得していない状態なのが、今の学園で
もちろん先生方は一縷さんのとった行動の理由を知っているし、それに対して非難なんてしてない
鈴音さんが居なくなった理由は、きちんと上級生に話されたはずなのに
何故か鈴音さんがスパイなのだという事実は認識されて居ない


「七松先輩、何も思わないんですか?」
「んー・・・一縷、今の状況楽しんでるみたいだから」


私は何もするつもりないかなーとけろりと言った七松先輩
僕はそんな七松先輩が頼りにならないことを心の中で太鼓判を押して、そうですか、と返した
事態を知っている七松先輩が何もしないのなら、僕ひとりでどうにかするしかない
僕はぐっと拳を握った

だって間違ったことをしていたら、直してあげるのが優しさだと、僕は思うから
(それはもしかしたら僕の自己満足かもしれないけど)



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